« ドラマ『同期のサクラ』 ~第2話を見て~ | トップページ | ドラマ『同期のサクラ』 ~第3話を見て~ »

2019年11月 1日 (金)

俺の道 ~ 恋愛編 ❤ 第一部 ~ <番外編> (1)

(1)ミュージカル『鏡の法則』

俺は、最終的に9月14日に本編の『恋愛編』を書き上げたのだった。

そして、21日に遥ちゃんと観に行く約束をしていた、ミュージカル『鏡の法則』まで、残り一週間となったのだった。


俺は、恋愛編を書いて行く中で、この小説を彼女に渡さないと決めた。

しかし、心の片隅では、読んで欲しいという想いは完全には消せていなかったのだ。

俺はこの日、書き上げた『恋愛編』をPDFにした。

そして、表紙と目次も作り、それもPDFにしたのだった。

A4用紙で100ページを超えた。


俺にしたら初めての大作だった。

そして、俺に『ゆるし』の次のステップである、『自己受容』の必要性と大切さに気づかせてくれた。

そして、俺の自己受容を短期間で急速に進展させてくれたのだ。


読者はまだいない。

しかし、思い入れはひとしおなのだった。


小説を完成させた俺には、最後の難関があった。

それは、遥ちゃんへの確認だった。

そう、遥ちゃんとのミュージカルを観に行く約束は、あくまで『仮』だったのだ。


俺は以前、不動産の売買を生業としていた。

中古のマンションや戸建住宅を買い取り、リフォームをして販売をするのだ。

買主になり、そして売主になった。

両方の立場になるということは、両方の気持ちがわかるということだ。

買う時は安く買いたい、売る時は高く売りたい、それが人情なのだった。


不動産は、申し込みを貰おうが、契約をしようが、所有権が移転する最後の最後まで何があるか分からない商売だった。

だから、不動産もある意味では『水商売』なのだ。

契約をしたからといっても喜んではいられない商売だった。

契約段階で喜び過ぎると、後で『ぬか喜び』となることが多いのだ。


今回の遥ちゃんとのミュージカルの約束は、あくまで『仮契約』みたいなものだったのだ。

仕事が入って行けなくなる可能性もあるのだ。

それなのに俺は、この1ヶ月、大喜びしてきたのだった。


脳裏には、最悪の場合、親友Tを誘って、おっさん二人で行くミュージカルが何度となく思い浮かびながらも、それを打ち消し続けて来たのだ。

いよいよその最終確認をしないといけない時期になってしまったのだった。


俺は、9月10日の研修で会ったのを最後に、遥ちゃんには連絡をしていなかった。

16日の昼頃、俺は意を決して遥ちゃんに確認のLINEを送った。


「21日は大丈夫そう?」


直ぐに彼女から返事が来た。


「そうです!お伝えせねばと思っていたのに忘れちゃってました(泣マーク)」


その言葉を見た瞬間、俺は思った。


「やっぱ、ダメかぁ・・・」


そして、Tの顔が頭をよぎった。

しかし、その後に続いた言葉に目を見張った。


「行けます!!」


俺は天にも昇る気持ちになった。

そして、俺は思ったのだった。


「なんであそこで泣きマークなんだよぉぉぉ・・・」

「はぁ~、ビックリしたぁ・・・」

「でも、良かったぁ~」


そして、俺は彼女と、21日12:15に西葛西駅で待ち合せることにしたのであった。


翌日にミュージカルを控えた前夜、俺にとっては予想外の事が起こったのだった。

それは、俺から、「明日はよろしくね~」と送ったLINEの返信だった。


俺は、ミュージカルを観た後、西葛西から麻布十番に移動して、昔行き付けだった蕎麦屋で遥ちゃんと一杯やる約束をしていたのだった。

俺は、自分が気に行った人は、男も女も、必ずこの蕎麦屋に連れていくのだ。

そして、この蕎麦屋に行った人とは必ず良い関係になっていたのだ。


遥ちゃんから送られて来たLINEには、やらなければいけない仕事が終わらず、ミュージカルの後の時間が取れなくなった。

そして、飲みはまた後日お願いしますとのことだったのだ。


俺は、何事も無い風を装ってLINEに返信した。

しかし、内心はそうではなかった。

大ショックだったのだ。


俺にとっては、ミュージカルも凄い楽しみだったが、それ以上に飲みの方が楽しみだったのだ。

普段研修の時には話せない様な話をしたいと思っていたのだったのだが・・・。

俺の夢は脆くも崩れ去ったのであった・・・。


21日の朝、俺はTにLINEを送った。


「今日の夕方時間ある?」

「飲みたいんだよね」


俺としては、ヤケ酒の気分だったのだ。

TはO.Kしてくれた。

Tの住まいは横浜駅から徒歩圏内だった。

ミュージカルは、13~15時だから、16~17時には横浜に着けると連絡した。

Tには、ミュージカルが終わって、横浜駅着の時間が分かったら連絡することにしたのだった。


俺は12時ちょっと前に西葛西駅に到着した。

タバコを吸いたかったが、近くに喫煙所が見当たらず、俺は遥ちゃんを待つことにしたのだ。

彼女は、12:15よりほんの少し遅れて到着した。


彼女は黒のニットにエルメスのスカーフのようなロングスカートにショートブーツという出で立ちだった。

スカートの裾がピーターパンのように縦にカットされていて、何か凄くカッコ良く見えた。

髪型はポニーテールではなかった。

何と言うのか分からないが、サイドからトップの方だけをまとめ、肩口はふわっとした感じの髪型だった。

俺は、こっちの方が可愛いと思った。


彼女は妙に大きめのトートバッグを肩から下げていた。

俺は内心で思った。


「昨夜は彼氏のところにでもお泊りだったのかなぁ・・・?」


俺の経験からすると、女性が大きめのバッグを持っている時は、大概はお泊りだと思っていたのだ。


遥ちゃんは、そのバッグをコインロッカーに入れたいとコインローカーを探した。

改札から少し離れた場所にコインローカーはあった。

遥ちゃんがコインローカーにバッグを入れようとした時だった、中には大きめのノートPCが見えたのだった。

そして、俺は思ったのだ。


「なんだぁ、お泊りじゃなかったのかなぁ・・・」


そんなことは俺には関係がないはずなのに、そんな勘繰りをしている自分が俺は嫌だった。


俺たちは、途中のコンビニで飲み物を買って、目的地へと向った。

目的地は、『東京映画・俳優&放送芸術専門学校』という所だった。

コンビニを過ぎると直ぐだった。

駅から5分と離れていなかった。


俺は入場券を渡し、俺たちは会場に入ろうとした。

その直前に俺はパンフレットに気づき買おうとした。

金額は2,000円だった。

金額を聞いた瞬間、ちょっと高いと思ったが、まぁ良いかと2冊頼んだ。

俺が2冊分払おうとしたのだったが、遥ちゃんは慌てて自分の分を出したのだった。


その姿を見て、俺は思ったのだった。


「遥ちゃんは、最初から買う気無かったのかなぁ・・・」

「なんか悪かったかなぁ・・・」


会場に入ると、会場は意外に狭く、客席まで行くのに一度舞台に上がってから行くようになっていた。

長方形の空間の真ん中に4~5m幅の舞台が斜めに配置され、残された三角スペースが客席だった。

客席は舞台の両サイドを挟む形で配置され、向いの観客の顔が見える状況だった。

前2列が指定席で、3列目から後ろが自由席になっていた。

一番舞台から遠い席でも5列目だった。

俺たちは3列目の真ん中の通路側の2席にした。

見易さを考えて、俺は遥ちゃんを通路側にしたのだった。


客席は、ざっと見て200席程度だと思った。

席に着くと、遥ちゃんはトイレに行くと言って席を立ったのだった。

少ししてから、遥ちゃんが帰ってきたら、俺もトイレに行っておこうと思った。

しかし、遥ちゃんは直ぐに帰って来なかったのだ。


俺は女性だからトイレが混んでいるのかと思った。

しばらくして遥ちゃんが帰って来て聞いたのだった。


「遅かったねぇ、トイレ混んでた?」


すると予想外の言葉が帰って来たのだ。


「混んではいたんですけど、外でタバコ吸って来ました」


俺は思った。


「なんだよぉ・・・」

「それなら俺にも一声掛けてくれれば良いのにぃ・・・」


俺は家を出てから1本も吸っていなかったのだった。

それに気づいた俺は、無性に吸いたくなった。

俺もトイレに行った。

するとトイレは一人用の個室で、男子トイレも並んでいたのだった。

開演時間はもう直ぐだった。

俺はタバコを諦め、トイレだけ済ませて席に戻った。


俺が席に戻ると直ぐに開演になった。

ミュージカル自体は、主演の樋口麻美さんの演技に俺は驚かされた。

涙を流し、鼻水まで垂らしながらも歌声には一切のブレがないのだ。

プロだと思った。

その姿に俺は涙した。

俺もそう在りたいと思った。


ストーリーは原作に沿ったものだったが、原作と大きく違っていたのは、主演の妻『栄子』に気づきを与えるコンサルタントの『矢口』だった。

ミュージカルの『矢口』はぶっ飛びだった。

ある意味、『壊れている』とさえ思えるほどだった。

親父ギャグの連発だった。

しかし、それが笑いとなり、泣きだけの湿っぽいものにはならないアクセントになっていた。


俺は原作を読んだ時は号泣だった。

何度も涙で読み進めなくなった。

だから、ミュージカルには、BOXティッシュとハンドタオルを持って行っていた。


俺は何度か主演の樋口麻美さんの演技に涙した。

そして、隣の遥ちゃんを見ると、彼女は涙している様には見えなかった。


ミュージカルが終わると、指定席の最前列の人たちだけが舞台上に上り、出演者の方々との集合写真の撮影が行われた。

俺は、指定席と自由席に左程違いがないのに、値段の違いは何なのかと思っていたのだが、その時その理由が初めてわかったのだった。


ミュージカルが終わり、俺たちは直ぐに外に出た。

そして、駅に向って歩き出した。

俺は思ったのだった。

これで、遥ちゃんとのことは全て終わりだなと・・・。


(つづく)

« ドラマ『同期のサクラ』 ~第2話を見て~ | トップページ | ドラマ『同期のサクラ』 ~第3話を見て~ »

俺の道 恋愛編」カテゴリの記事