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2019年11月 8日 (金)

俺の道 ~中高生編~ (6)

(6)俺たちは○○だ!

俺の記憶は、本当に自分が好きだった仲の良かった奴との記憶しかほとんど残っていない。

なぜなのかは分からないが・・・。

先輩もそうだ。

カッコイイ憧れの様な先輩のことしか覚えていない。


10代後半の頃から俺は、明確に『100人の飲み友達より、1人の親友が居ればそれでいい』という考え方で生きて来た。

しかし、こうして振り返って見ると、その考え方は、中2の引っ越し以降に作られて来たように思う。


俺は4~5年前までは、学生時代の友達とは一人も繋がっていなかった。

しかし4~5年前、偶然ミクシーで同級生のK子からメールが送られて来たのだった。


K子とは、特に仲が良かった記憶はなかったが、中1か中2の時に同じクラスで、名前が変わった読み方だったことから、名前だけはシッカリ憶えていたのだ。

K子は誰とでも仲良く出来るタイプらしく、結婚して地元を離れていても、中学時代の友だちとも仲良くやっているようだった。

そして、地元の女友だちたちに声を掛けてくれ、少ししてからプチ同窓会をやってくれたのだ。

男は、俺とY中の二人だけで、あとは女が7~8人だった。

当たり前だが、みんなおじさんとおばさんだった。


そして、俺たちの代は、東京オリンピックの年の生まれだったことから、卒業後は4年に一度オリンピックの年に学年での同窓会をやってきているのを教えられたのだった。


俺は、そんなことは全く知らなかった。

俺は、16で一人暮らしを始めてから、6年前に離婚するまで、一度も保谷には帰っていなかった。

もちろん成人式も出ていない。


そして3年前、俺は36年振りに中学の同窓会に参加したのだ。


実際に参加してみて思ったのは、知らない奴の多さだった。

中3の時に同じクラスだった奴らと、サッカー部の奴ら、そして多少つきあいのあった仲の良かった奴らのことしか知らなかった。

向こうは知っていても、俺は知らなかったのだ。

どちらかというと、男より女の方が知っている顔は多かった。


そして可笑しかったのは、俺と仲の良かった女たちは、何故かみんな俺に母親のような口ぶりで俺に話し掛けてくることだった。

「もう、なにしてたのよ~」

「急に居なくなったから心配してたんだよ~!」

「今まで何してたの?」

「どうしてたの?」

「もう、死んじゃったんじゃないかと思って心配したんだから~」

などなど。

4~5人の女たちから次々に聞かれたのだった。


俺は小さくなるしかなかった。

そして、俺は内心で思った。


「こいつらは俺の母親か?!」

「俺はそんなに子どもっぽかったのか??」


確かに、男よりも女の方が、仲が良かった奴は多かったのだが・・・。


「女は、みんな俺を子ども扱いしていたのか??」

「俺は自分の知らない所で、子ども扱いされていたのか??」


この時の俺は、自分が抱いていた自分自身のイメージとのギャップで、自分が分からなくなりかけたのだった。


そして何より驚いたのは、男がみんな思ったより老けていることだった。

若い頃は老けて見られていたはずの俺の方が、知らない内に若く見える感じになっていたのだ。

逆に女は、俺の知る同世代の女性より若く見える奴らが多かった。

俺が気づかなかっただけで、俺の同級生は案外綺麗な奴が多かったのかも知れないと思ったのだった。


俺は、中2の引っ越し以降、学区域からの登下校はいつも一人だった。

途中で誰かと合流したり、途中まで一緒に帰ったりというのがほとんどなかった。


友だちが居なかった訳ではなかった。

ただ、仲が良い奴は限られていて、俺はそれ以外と付き合うのが面倒臭かったのだ。

普段はサッカーばかりで、休みの日に誰かの家に遊びに行くというようなことは一度もなかった。

俺んちに来る奴も一人もいなかった。

俺は、自分が熱中していること以外、全く興味が無い奴だったのだ。


それは、中3になってから顕著に現れた。

人間関係もさることながら、授業もそうだった。

興味の無い学科の授業は、ほとんど寝ていた。

特に保健体育は、授業を受けた記憶が全く無かった。


そのため俺は、どうしたら子どもが出来るのかは、中3になるまで知らなかったのだ。

それも、中3になった頃、K川から聞かされて初めて知ったのだった。

当時の俺は、うぶだったのだ。


しかし、中3の夏、それまで熱中していた俺のサッカー生活が終わってから、俺は変わり始めたのだった。

それまでスポーツ刈りだった俺は、髪を伸ばし始めた。

同時に揉み上げも伸ばした。


当時、舘ひろし率いるクールスが流行っていた。

俺は、『俺たちは天使だ!』の『柴田恭兵』が好きで憧れた。


髪の毛を伸ばした俺は、柴田恭兵の真似をしてサイドバック風のリーゼントにした。

当時、整髪料を買うことが出来なかった俺は、親父のポマードとチックを盗んで使っていた。


いつしか、校庭で行われる全校集会の朝礼の場で、『そこの頭光ってるの!』と、学年主任でもあった俺の担任のS澤から、毎週のように叱責されるようになっていったのだ。


俺の学校では、俺の目から見た不良は一人も居なかった。

ただ、男子バレーボール部の奴らを中心に、何人かが中ランを着て、多少のツッパリ系が群れをなしてはいた。

しかし、俺より強いと思える奴は一人もいなかった。


そのグループの中心的存在の奴は俺と同じクラスのS藤だった。

S藤は口は達者だったが、俺の興味を引くレベルでは無かった。

同じクラスで知ってはいても、全く興味が無かったのだ。


俺は、そいつらとは一切つるまなかった。

そして、俺からは一切手を出す事もなかったのだ。


しかし、サッカー部の補欠だった奴が一人、何を思ったのか、ある日俺を呼び出したのだ。

そいつは、サッカー部のくせに男子バレーボール部の奴らとつるんでいたのだ。

今思えば、多分、そいつのクラスは男子バレーボール部の奴らが比較的多くいたからかも知れない。

冷静に考えれば、そいつらにそそのかされたのかも知れないとも思える。


そいつは、運動神経も大して良くなかった。

根性があった訳でもなかった。

特に何かに優れていると感じさせるものは何もなかった奴なのだ。

部活以外で付き合ったことは一度もなかった。


しかし、当時の俺は、そんなことには全く気づけなかったのだ。


逆に、当時の俺は楽しみだったのだ。

堂々と喧嘩が出来ると。


俺はやる気満々で独りで呼び出された場所に行った。

しかし、そいつはそこに現れなかったのだ。


人を呼び出しておいて現れないとは何事かと、俺は思った。

俺は楽しみを奪われた気分だった。

俺の腸は煮えくり返った。


そいつはE組のI藤、あだ名をH子と言った。

腸が煮えくり返った俺は、E組まで出向いた。

俺はそいつの襟首を掴んで、そいつを締め上げた。

そして、俺はH子に言ったのだ。


「てめぇ、人のこと呼び出しておいて、なんで来ねぇんだよ!」


すると、H子は言ったのだった。


「S藤に、あいつにだけは手を出すなって言われたんだよ・・・」

「殺されるぞって・・・」


俺は、なるほどなと思った。

S藤の言いそうなことだと思ったのだ。


S藤は俺からすると、喧嘩が強いとか、根性があるとか、リーダーシップがある訳ではなかった。

ただ、口が達者で、単にズル賢しこい奴だったのだ。


俺は、H子に詫びを入れさせ、それで終わりにしたのだった。

そして、いつしか俺の周りでは、『あいつにだけは手を出すな』という風潮になっていったのであった。


しかし、人間と言うものは、根本的には子どもの頃から左程変わらないものだと、3年前の初めての同窓会に出た時に俺はつくづく思ったのだった。


偶然にも俺は、3年前に初めて参加した同窓会でH子と会ったのだった。

同窓会の会場では見掛けなかったのだが、喫煙所に行くとH子がいたのだ。

そして、偉そうに一人長イスの中央に腰掛け、何人かに向って話していたのだった。


俺はH子に声を掛けた。

そして、今何をやっているのかを聞いたのだ。

すると、H子は偉そうに言ったのだった。


板前をやっていて、日本料理の3会派の内の一つのS会の理事になったと。

そして、料理学校で教えていると。

鼻高々に言ったのだ。


それを聞いた俺は言ったのだった。


「へぇ~、そりゃあ凄いなぁ!」

「料理学校の先生なんだ~」


そして、俺は悪気も何も無く、ただ普通に何気なく言ったのだった。


「お前、S会なのか?!」

「S会なら俺も多少知ってるよ~」

「昔、若い頃にS会のS藤さんに世話になったことがあるんだよ~」

「もう、30年位前だけどな」


H子は、その名前を聞いた瞬間に愕然としたのだった。

S会のS藤さんは、俺が世話になった当時、日本料理界のドンと言われた人だったのだ。

そして、その後、俺はH子と多少話をしたのだ。

そして、H子は最後に一言だけつぶやき、すごすごとその場を後にしたのだった。


「もう、H子って呼ばないでくれよぉ・・・」


俺はその時、その一言でピーンと来たのだった。

こいつは、俺に付けられたあだ名が気にくわなかったのかと。

それで、俺をあの時呼び出したのかと。


俺としては、愛着を込めて付けてやったつもりだったのだが・・・。

あいつはそれが嫌だったんだなと。

俺は自分で気づかない内に、あいつを傷付けていたことに気づかされたのであった。


「悪かったな、H子!」


奴を傷付けたことには気づいた俺だが、だからと言って今更あだ名は変えられない。

H子は、いくつになっても、どんなに偉くなろうとも、H子だと思う俺なのであった。


(つづく)

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