俺の道 ~中高生編~ (11)
(11)脱出作戦
高校に行ってからの俺は、小学校から仲の良かったK川や、同じ中学出身の友人との付き合いは日に日に少なくなっていった。
それより、サッカー部で出会った新たな二人と特に仲が良くなっていた。
そして、しょっちゅうつるむようになっていたのだった。
Y中サッカー部主将だったI盛と、T二中サッカー部主将だったM沢だ。
I盛は同じクラス、M沢は隣のクラスだった。
二学期になり、最初理由は分からなかったのだが、M沢が親の負担でアパートでの一人暮らしを始めたのだった。
そして、M沢は中型二輪の免許を取り、バイクも持っていた。
YAMAHAのRD400だった。
俺は良く後ろに乗せて貰っていた。
教習所代もバイク代も親に出して貰っていた。
俺は、そんなM沢が羨ましかった。
M沢が一人暮らしを始めたことを聞いた俺は、ある作戦を思いついた。
そして、直ぐにM沢に相談した。
家出だ。
M沢は直ぐに応じてくれた。
そして、この時の俺には、家出の裏に、ある計画があったのだった。
俺の計画を実行するに当たっては、ある程度の生活用品が必要だった。
俺には生活して行くだけの金がなかったのだ。
俺がM沢に相談すると、M沢は万引きを提案した。
M沢は、以前万引きをしたことがあると言ったのだった。
俺はM沢から万引きを教わった。
そして、二人で実行したのだ。
主にパクっていた物は、ヘアケア商品とかTシャツ、下着とかの日用品と衣類、そして簡単な食料品だった。
俺たちは、一店舗でまとめてはやらず、色々な店で少しずつ貯め込んだ。
途中からI盛も加わり、俺たち3人はゲーム感覚で万引きをした。
そして、俺とM沢は、取りあえずの生活用品が揃った所で万引きから手を引いたのだった。
そして俺は、家出を決行した。
二人の共同生活は、めちゃくちゃ楽しかった。
ある夜、寝る前に俺はM沢に聞いた。
なんで、一人暮らしになったのかと。
俺はバイクも買って貰い、一人暮らしまでさせて貰っているM沢が羨ましかった。
M沢は、言い難そうに少しだけ打明けた。
M沢の親父が再婚したと。
それまでは親父と二人暮らしだったらしい。
新しい家庭の中には、M沢の居場所が無かったらしい。
それで一人暮らしになったと。
俺はそれ以上聞かなかった。
ジャニーズ系のイケメンで、明るいM沢だったが、こいつにも色々あるんだなと思ったのだ。
そして、予想通り、家出をしてから1週間ほど経ったある日の夜、M沢のアパートに親父は現れたのだった。
俺にとっては、ここからが本番だった。
帰ることを強制する親父に対し、見つかったからといって素直に帰る俺ではなかった。
俺には、明確な目的があったのだ。
俺は親父とある交渉をしたのだった。
交渉内容は、俺がアルバイトをすることに同意させることだった。
この時の俺の本当の目的は、家出ではなく、アルバイトだったのだ。
親父に見つかることは、計画の中に入っていたのだ。
なぜなら、家出をした俺は、M沢と一緒に毎日学校に行っていたのだ。
家出が目的なら学校には行かない。
しかし、俺は毎日M沢とともに学校に行ったのだった。
この時の俺は、とにかく自分の自由になる金が欲しかったのだ。
そして俺は、親父との交渉でアルバイトをすることへの同意を得たのだった。
この時点で俺の目的は達成した。
俺はこの日を最後に自宅に戻ったのだった。
そして間もなく俺は、念願だったアルバイトを始めることになったのであった。
(つづく)
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