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2019年11月22日 (金)

俺の道 ~アラカン編~ 三峯神社の巻 (3)

(3)後悔からの脱出

俺を乗せたバスは街中での渋滞も無く順調に走った。

俺はずっと車窓から外を眺めていた。

街中を抜け、三峰口駅を過ぎると、外は徐々に紅葉が多くなって来た。


俺の座った左側には、時折のぞく渓流が見え、この時期のBBQも良いのかも知れないと思った。

紅葉は、山の上の方より渓流に近い下の方が綺麗だった。

俺は、渓流が見えるタイミングで写真を撮ろうとした。


何枚かの写真を撮っている内にスマホのバッテリーの減りが早いのに気づいた。

家を出る時に100%だったバッテリーの残量は、既に60%近くになっていた。

俺のスマホは、iphone6なのだが、最近はバッテリーの減りが早く、きっと最近のアプリのバッテリー使用量が増えているのだろうと思った。

この日は、いつもは持っている予備の電池を持って来なかったことを俺は少し悔いた。


終点の『三峯神社』の一つ手前の『秩父湖』のバス停を過ぎ、秩父湖を渡って少し行った時だった。

車内の後方から、気分が悪い人が出て降りたいから停めて欲しいと声が上がった。

バスは左に寄って停まった。


後方から、車内が暑過ぎると声が上がった。

待っていると、満員の状況の中を後方から人が移動して来た。

運転手の所までやっとの思いで出て来たのは、ダウンの上着を脱いで左手に持った80歳は超えていると見えるおばあちゃんと、3~40代に見える女性だった。

おばあちゃんは運転手に言った。


「暑過ぎるわよぉ」


しかし、運転手は何も答えなかった。

そして、下りるおばあちゃんに運転手は言ったのだ。


「下りも行ったばかりだから、まだ1時間位掛かりますよ」

「良いんですか?」


おばあちゃんは具合が悪いと言うよりも、怒った感じで何も言わずにバスを降りたのだ。

そして、連れの女性も一緒に降りたのだった。


二人を降ろしたバスは直ぐに発車した。

その時だった、またもや後方から声が上がった。


「暑いから窓を開けて良いですかー!!」


俺は、あれだけ暑いと言っているのに、近くの人は何もしてくれないのかと思った。

俺は中腰になって窓を開けようとした。

俺の後ろの席の人も同じように窓を開けようとした。

しかし、固くて窓は開かなかった。

その時、運転手はやっとエアコンをつけ、冷気が流れた。


車内に安堵の雰囲気が流れた。

俺は座っていたからか、レザージャケットを着ていても、暖かくはあったが暑いとは感じていなかった。

きっと立っている人たちはみんな、かなり暑かったのだろうと思った。


そして、暑いのなら暑いと、エアコンをつけて欲しいならエアコンをつけて欲しいと、なぜハッキリと言わないのかと思った。

後方の周りの座席の人たちは、なぜ窓を開けてあげなかったのだろう?

あんなに大きな声で後方から運転手に聞く位なら、自分の近くの人に一声かけて窓を開けて貰えば良いだけなのに、なぜそうしなかったのだろう?

周りの人たちは、気分の悪くなったおばあちゃんに、なぜ席を譲ってあげなかったのだろう?

俺はそう考えていた。


その時、俺は急に思った。


「俺は、なぜ降りようとするおばあちゃんに席を譲ってあげて、もう少しだから頑張ろうと言ってあげられなかったのか?」


そう思った瞬間、俺は悔やんだ。

胸が張り裂けそうな思いに駆られた。

バスは、おばあちゃんたちを降ろしてから、既に5分位走っていた。

後戻りは出来なかった。


俺は考えた。

あそこから歩いて三峯神社まで行くのは無理だ。

手前の秩父湖のバス停まで戻るのにも、歩いたら20分位は掛かるだろう。

若い人ならともかく、80歳過ぎのおばあちゃんだ。

俺はめちゃくちゃ心配になった。


しかし、どうすることも出来なかった。

もう少し早く気づくべきだった。


おばあちゃんと一緒だった女性も、なぜ何も言わずに降りたのだろう?

もしかして、気分が悪くなっていたのは、おばあちゃんじゃなくて一緒にいた女性の方だったのか?

俺は、色々なことを考えた。

しかし、既に時遅しで、考えても仕方のないことだった。


俺が諦めかけたその時だった。

俺は、傍観者になってしまっていた自分に気づいた。

そして、恥じた。

そういう自分が悔しくて情けなかった。


俺は、次同じような場面に出くわした時は、絶対に傍観者にはならないと反省し決めた。

そう決めて、俺はおばあちゃんと一緒に降りた女性、二人への思いを振り切った。


それから少しして神社まで残り2.2Kmの看板が見えた。

6年前に初めて来た時も、去年もそうだったのだが、この辺りから渋滞がはじまり、神社に着く手前1Km位で降りて歩いて行ったのだ。

俺は、そろそろ渋滞になるだろうと思っていた。


しかし、全く渋滞の様子は無く、バスはそのまま三峯神社に到着したのだった。

俺は驚いた。

そして、今日は何てラッキーな日なんだろうと思ったのだった。


(つづく)

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