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2019年11月 6日 (水)

俺の道 ~中高生編~ (4)

(4)あゝ無情

正確にいつだったのかは憶えていないが、俺は中2の途中で生まれてから三度目の引っ越しをした。

同じ市内の本町という町だった。

隣のT市の境界に近い所だった。

学区域は隣のHB中の学区域だった。


この時の引っ越しは、両親からは何も聞かされてなく、いきなりの引っ越しだった。

サッカーに燃えていた俺は、転校を拒否し、それまでのH中に学区域外から通った。


この家は、それまでの借家とは違い、親父が購入したものだった。

しかし、小学生の時、毎週末の建売住宅の折り込み広告を見ながら、俺が夢見ていた様な家では無かった。


1階は6畳の和室と3~4畳位の台所にトイレと風呂。

2階が6畳の和室と3畳の和室という小さな家だった。


俺には2階の6畳間が与えられた。

とは言え、ベランダに出るには俺の部屋を通らなければならなかった。

妹の3畳の部屋に行くのにも俺の部屋を通らなければならなかった。

俺の部屋は、通り道にしか過ぎなかったのだ。


自分の部屋が出来たとは言え、俺は全然嬉しくなかった。

それよりも、それまで毎日学校までの行き帰りを一緒にしていたK川と離れたことの方が辛かった。

この家に引っ越してからは、行きも帰りもいつも俺は一人だった。


当時の俺は、気性が激しくて喧嘩っ早く、目つきが鋭かったが、特に自分がグレていたり、不良だという認識は無かった。


ただ、不良が着ていた中ランや長ラン、ボンタンとかの制服はカッコ良いと思っていた。

俺は長ランに憧れた。

しかし、そんな小遣いなど貰っていない俺には手の届かないものだった。


俺の中学で長ランを着ている奴はいなかった。

数人が中ランを着ている程度だった。

ボンタンのような太いズボンをはいている奴もいなかった。

俺の学校には、特に目立った不良はいなかったのだ。


俺にとっては、外観のカッコをつけている金銭的余裕は全く無かった。

サッカーのスパイクを買って貰うのがやっとだった。

それもアディダスやプーマといった、当時のブランドものではなく、日本のYASUDAだった。

当時は、同じような物でもYASUDAが一番安かったのだ。


俺は小さい時から、靴はいつもぎゅうぎゅうのものを履かされていた。

足が大きくなっても、ギリギリまで新しいものを買って貰えなかったのだ。

かと言って、俺は靴のカカトを踏むようなこともしなかった。

そのせいか、足の指は自分の意思で開け閉めが出来ない。

足の指でグッパーが出来る人を見ると羨ましくなるのだった。


その反動からか、息子には常に大きめの靴を履かせた。

息子は小学校6年生の時には26サイズの俺を超え、靴のサイズは28まででかくなった。

もちろん足の指でグッパーが出来る。


俺は引っ越して直ぐに、隣の中学の奴らと喧嘩になりそうになった。

自宅から100m程度の所に駄菓子屋の様な雑貨屋があった。

そこが隣の中学の不良の溜まり場だったのだ。


そこは俺の通学路だった。

俺は毎日の行き帰りにその前を通るのだ。

そして、いつも部活が終わった後の帰り道で、不良どもと遭遇するのだった。


最初の数日は、互いにガンの飛ばし合いだった。

しかし、何日目かの時、長ランを着た頭らしき奴が一人歩み寄って来たのだった。

背は大して高くなく、小柄だった。

俺は臨戦態勢に入った。


すると、歩み寄って来たそいつは、いきなり俺のあだ名を呼んだのだ。

声に聞き覚えがあった。

しかし、見覚えはなかった。


するとそいつは笑顔でいったのだった。

「俺だよ俺、K一だよ」


俺はビックリした。

K一は、小学校5~6年の時に同じクラスの奴だった。

小学生の頃は、気が弱く、デブでよくみんなにからかわれていたのだ。

俺とは仲が良くて、いつも俺が守ってやっていたのだ。


良く見ると、目は優しいK一の目だった。

しかし、顔と身体は以前のデブから一転し、細くひょろひょろで別人だったのだ。

俺は、あのK一か?!と、大爆笑した。


K一はどうやら2年でHB中の先輩から頭を引き継いだようだった。

K一がHB中の連中に何を言ったのかは知らないが、いつしか俺が通ると、みんな俺に挨拶をするようになっていた。


しかし、俺はサッカーに夢中だったから、そいつらとつるむことはなかった。

K一とは社会人になってからも、時々連絡を取っていたのだが、いつしか音信不通になった。

K一はフィンガー5で有名になった、隣のT市のテキヤ系の組に入ったようだった。

一時期は屋台を何台か任され羽振りの良い話しを聞いていたのだが・・・。

風の噂では、シャブ中になって死んだようだった。


今でも思う。

あんな気の弱い優しい奴が何でと・・・。

もし、生きていたら、K一も会いたい同級生の一人だった。

無情さを感じずにはいられない俺なのだった。


(つづく)

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