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2019年12月23日 (月)

俺の道 ~アラカン編~ 第60回AF研修の巻 (2)

(2)怒りとは

この日の『心構え』で、俺が二人目に相対した研修生は、ある企業から参加してきた30歳の青年だった。

企業からの要望書には、パフォーマンスも高く、現場での対応力も良好で、更なる飛躍を望んで営業職に抜擢したが、壁に当たり元の位置に戻したことが記載されていた。


その彼は、直ぐに怒ってしまったり、イライラしてしまう自分が嫌だと言った。

俺は、どういう時に怒ったり、イライラしてしまうのかを聞いた。

彼は、運転をしている時や、部下が何度か教えたことが出来ないと直ぐにイライラして怒ってしまうと言った。


いつもの俺だったら、それが何故なのかを聞く所だったのだが、この日の俺は変えたのだった。

怒りの感情については、ちょうど11月に自己実現塾で学んだことだったからだ。

いつもより少し時間はかかるかも知れないと思ったが、俺は試してみるには良い機会だと思ったのだ。


俺は、『怒り』や『イライラ』という感情が、心理学的には『第二感情』であることを説明した。

そして、その根底には、『第一感情』があることを教えたのだ。


更に、例えば、教えた事がなかなか出来ない部下にイライラするのは、教えたことがなかなか分かって貰えない辛さや悲しみ、自分がなかなか上手く伝えられていないと思う無力感などが第一感情にあること。

そして、その感情を自分の中で上手く消化出来ず、その気持ちを怒りやイライラで誤魔化していることを教えたのだ。


そして、最近多い、『あおり運転』や、SNS上の誹謗中傷などは、その典型的な例で、やっている人たちはみんな、自分の寂しさや辛さを自分で抱えることが出来ずに、怒りやイライラという形で外にぶつけているんだよと話したのだった。


すると彼は、「すぐ怒る人は、本当は寂し人なんですか?」と聞いて来たのだった。

俺は、「そうだよ」と答えた。

そして、「俺の若い頃は酷かったんだよ」と、話して聞かせたのだった。


そして、その寂しさや辛さが自分一人で抱えきれないのは、その人だけの責任ではなく、子どもの頃からの親子の関係とかにも原因があることを教えたのだった。


すると彼は、「寂しい人・・・」とつぶやき、しばらく考え込んだのだった。

俺は、黙って彼から出て来る次の言葉を待った。


彼は突然、「まだ誰にも話したことがないことなんですけど、話しても良いですか?」と聞いて来た。

俺は、「いいよ」と答えた。


彼は4人兄弟の長男だと言った。

そして、彼が19歳の専門学校に通っていた時のことを話し始めたのだった。


彼の口から出て来た話しは、想像を絶するものだった。

その出来事があってからの彼は、長男としての責任感から、まだ中学生や小学生の弟や妹を守る為に専門学校を辞めて働き出したと語った。


俺は彼の辛さや寂しさや無力感に共感し涙を流した。

そんな俺を見て、彼は言った。


「あの事件以来、俺、泣けなくなっちゃったんですよ・・・」


「そうかぁ・・・」

「それは辛かったなぁ・・・」

「頑張って来たんだなぁ・・・」

「よく耐えて来たなぁ・・・」


「もう、自分を責めなくて良いんだよ・・・」

「泣いても良いんだよ・・・」

「泣くことは、恥ずかしいことなんかじゃない・・・」


俺は、そう言った。


彼は目を真っ赤にして涙を流したのだった。


そして彼は、「来て良かった・・・」と、つぶやいたのだ。


彼は1歳の長男がいて、今奥さんが二人目の臨月で、この研修中にも産まれそうで、研修に来るかどうか悩んだと話したのだった。


俺は、二人目の子が、男の子なのか女の子なのかを聞いた。

彼は女の子だと答えた。


俺は、それは良かったなぁと、それなら、お父さんが頑張っているんだから、きっとこの研修が終わるまで、出て来るのを待っていてくれるはずだと言った。


彼は、「そうですよね」と笑顔で答えた。


俺は彼に言った。


「奥さんを愛しているんだろ?」

「子どもたちを愛しているんだろ?」


「はい」


「ならば、仕事での怒りやイライラなんかのストレスを家に持ち帰っちゃいけないんじゃないのか?」


「そうですね・・・」


俺は彼に問いかけた。


「奥さんや子どもたちの幸せを考えたら、今までの直ぐに怒ったりイライラしたりする自分のことをどう思う?」


「小さいですね」


彼は答えたのだった。


「そうか、小さいか・・・」

「良かったなぁ・・・」


「君は今、俺に過去の誰にも話せなかったトラウマの話しを話す事が出来たんだ」

「それは、過去に囚われて執着していた出来事を、君自身が手放したことなんだよ」

「一度手放した以上、もう囚われたり、執着する必要は無いんだよ」


「君にとって一番大切なものは家族なんだろ?」

「ならば次は、これからの自分はどうありたいのか、その為に自分はどうしたいのか、どうすべきなのかを考えるんだ」


こうして、この彼の試験は次のステップへと進んだのだった。

しかし、俺の中では驚きだったのだ。


通常なら、過去のトラウマと向き合う為には、何人ものインストラクターやトレーナーとの試験を経て、何度も「なぜ?」を自問自答した結果、生まれて来るものだからだ。

そこまで行くのに、通常なら少なくても2~3時間は掛かるのだ。


それが、まだ始まったばかりの初っ端で、いきなりトラウマの話しが出て来たのには驚きだったのだ。

何か不思議な感じがしたのだった。


(つづく)

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