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2019年12月25日 (水)

俺の道 ~アラカン編~ 第60回AF研修の巻 (4)

(4)不慣れなことに取り組み続ける覚悟

この日の夜の部は、19:15から始まり、メイントレーナーの話しの後、19:45頃から試験が再開されたのだった。

俺は何人かの試験を受けた後、再度30歳の青年が俺の所に回って来たのだった。


俺は、この青年に対しては、『まだ誰にも話したことが無いこと』を話してくれたことで、彼に対する理解は深まっていた。

そこで俺は、彼に対し、ある試みに挑むことにしたのだった。


彼は、俺の前に座ると、俺の目を見て目を潤ませていた。

そして、前回の話しに続き、奥さんと息子、そしてもう直ぐ生まれて来る娘の為にも、自分が変わらないといけないと話した。


彼の「変わりたい」という想いは、十分に俺の心に伝わって来た。

しかし、「変わりたい」という想いだけではダメなのだ。


人は誰もが変わりたいと願っている。

しかし、その殆どが変われないのが現実だとも俺は思っている。

本当に変われるのは一握りの人間だけだと思う。


そして、このAF研修に参加して来た人には、その一握りの人間に入って欲しいと俺は想い、一人一人に相対しているのだ。

特に俺と縁あって、試験という形での出会いではあっても、共に真剣に向き合った人には、その想い入れは強くなってしまうのが現実だった。


だから、中途半端な対応は出来ないのだ。

限られた時間の中で、全力でぶつかり、そして受け止めるのが、俺の出来る唯一の方法だった。


ただ、これまでの俺は、その全力が『熱さ』であり、『強さ』となって表れていたのだが、それを『優しさ』に変えたいと思っていたのだ。

それが、今回の研修での俺自身の最大のテーマだったのだ。


俺は、彼に聞いた。


「日本には四季がある」

「なぜだか知っているかい?」


彼は答えに詰まった。

俺は続けて聞いた。


「春は何のためにあると思う?」


「・・・・・・?」


「夏は何のためにある?」


「・・・・・・?」


「秋は何のためにある?」


「冬のため・・・?」


「冬は何のためにある?」


「春のため・・・?」


「そう、春の準備のためだ」

「春は何のためにある?」


「夏の準備のため・・・?」


「そうだ」


「夏は何のためにある?」


「秋の準備のため」


「そうだ」

「日本の四季と言うのは、全て次の季節の準備の為にあるんだよ」


「では、昨日は何のためにある?」


「今日のため・・・?」


「今日の準備のためだ」

「では、今日は何のためにある?」


「明日の準備のため」


「そうだ」

「明日はなんのためにある?」


「明後日の準備のため」


「そうだ」

「では、今は何のためにある?」


「・・・」


「未来の準備のためだ」


「良いか、これから俺が話す事をシッカリと胸に刻んで欲しい」

「心構えとは、心の準備のことなんだ」


「人間は、『今』という時間を積み重ねて『未来』に向って生きて行く生き物なんだよ」

「『今』は、通り過ぎてしまったら、既に『過去』になるんだ」

「だから、『今』を全力で生きられない人に、明るい未来は来ないんだよ」


「わかるか?」


「はい」


「1年後、君は二人の子どもたちにとってどんなお父さんになっている?」

「同時に、奥さんにとって、どんな夫になっているんだ?」

「3年後、どんなお父さんになっている?」

「あるいはどんな夫になっているんだ?」


「・・・」

「考えていませんでした・・・」


「そうだよなぁ、ほとんどの人が、ああなりたい、こうなりたい、変わりたい、みんな漠然とは考えているんだよ」

「昇給したい、昇格したい、もっと良い家に住みたい、もっと良い車が欲しい、欲望ばかりなんだ」

「そして、昇給し、昇格していけば、幸せになれる、理想の自分に近づけると思っているんだよ」


「若い頃の俺もそうだった」

「常に一番を目指していた」

「常に誰かと競っていた、闘っていたんだよ」


「だから、誰よりも勉強し、誰よりも仕事をした」

「その結果、一番にもなったし、独立もし、一時的には人より多い金も手にしたこともあった」

「それで、楽しくもあったし、喜びもした」


「でも、それは一時的なもので、幸せではなかったんだよ」


「人は、昇給昇格を目指して知識や技術を身に付けていけば、それなりに仕事が出来る様にはなって行く」

「そして、そうなって行けば、当然幸せになれると思っているんだ」


「でも、ありたい自分ではなくなって行くんだよ」

「みんな成功することが、幸せになることだと錯覚しているんだよ」


「わかるか?」


「はい」


「でも、違うんだよ」

「どういう人間でありたいのか、どういう夫でありたいのか、どういう親でありたいのか」

「人間として幸せになるためには、そっちの方が遥に大切なことなんだよ」


「でも、そのための準備は何もしていないのが現実なんだよ」

「ただ日常の中で、仕事や家事、育児とかに追われ、何の準備もないまま、忙しさの中で時に流されていくんだ」


「君だってそうじゃないのか?」


「そうですね・・・」


「みんな、今の自分になりたいと思ってなっている訳ではないんだよ」

「みんな、それなりに一生懸命生きて来た結果が、今なんだよ」

「そして、みんな、そんな自分を変えたいと思っているんだよ」


「それは、ほとんどの人が、今の自分が、心底自分が望んだものではないという証拠なんだよ」

「今の自分が、心底自分が望んだ自分であるなら、変わる必要なんてないだろ?」


「そうですね」


「一生懸命生きて来て、気が付いたら今の自分になってしまっていたんだよ」

「だから、変わりたいと思うんだよ」


「君だってそうだろ?」


「そうですね・・・」


「でも、ほとんどの人間が変われないんだ」

「なぜだと思う?」


「・・・」


「未来に対する準備が出来ていないからなんだよ」

「今よりも、もっと幸せになりたいとみんな思っているんだ」

「それなのに、幸せになるための準備はしていないんだよ」


「幸せになるための心の準備が出来ていないんだ」

「それは、心構えが出来ていないということなんだよ」


「それでも人は、変わりたいという」

「今の自分を作って来たのは、これまでの考え方ややり方なんだよ」


「今の自分を変えたいと思うのなら、まずは、全てでは無くても、これまでの考え方ややり方が間違っていたこと、あるいは正しくなかったことに気づかないといけないんだ」

「これまでの考え方ややり方だけでは、自分が望む自分にはなれないことに気がつかないといけないんだよ」


「それは、『自覚』するということなんだ」

「人は、自分の間違いを自覚して、初めてこれまでの慣れた考え方ややり方を変えなければいけないと心底思えるんだよ」


「わかるか?」


「はい」


「これまでの慣れた考え方ややり方は、習慣になり、その人の心のクセになってしまっているんだよ」

「変わりたいのであれば、今までの慣れた考え方ややり方を変えないといけないんだ」

「慣れた考え方ややり方というのは、自分にとって楽な考え方ややり方ということなんだよ」


「でも、慣れた考え方ややり方は、既に無意識でそうなってしまっているんだよ」

「それを変えて行く為には、意識的に今までとは違う、慣れていない考え方ややり方をして、今までの慣れた考え方ややり方を変えていかないといけないんだ」


「わかるか?」


「はい」


「新しい考え方ややり方は、今までとは違った、慣れていないものだから、最初の内は、かなり違和感が出るんだよ」


「その違和感は、これで良いのか?という不安や疑念も生む」

「そして、それは周りから見ても、これまでとの違いを感じて違和感に映るんだよ」


「あいつ、何か変だぞ・・・みたいな感じでな」

「それは、恥ずかしさや照れくささを生んだりもするんだ」


「変われない人はみんな、変わろうとはしても、そういう違和感や不安感に負けて、元に戻ってしまうんだよ」

「元々慣れていた前の考え方ややり方に戻っていくんだ」


「この元々の考え方ややり方を変えて行かないことには、人は自分が望むような未来には変えていけないんだよ」


「さっき話しただろ?」

「今は、未来の準備のためにあるって」

「自分の未来を変えたいと思うなら、『今の自分』を変えないと、何も変わらないんだ」

「状況や環境と言った、自分の周りや世の中は変わって行っても、自分自身は変わらないんだよ」


「わかるか?」

「はい・・・」


「でも、たった一つだけそれを変えて行くことが出来る方法があるんだよ」

「知りたいか?」


「知りたいです!」


「でも、知っただけでは変われないんだよ」

「変わる為には、知ったことを実践しないといけないんだよ」

「君は知った後、その方法を実践していく勇気はあるのか?」


「あります!」


「そうか、じゃあ、教えよう」

「まず、最初に『絶対に変わりたい!』、『変わるんだ!』と決心することだ」


「はい!そう思っています!」


「そうだよな、それは最初の君の話しで、俺はその想いは感じた」

「でも、それだけではダメなんだよ」


「本当に大切なのは、『覚悟』なんだ」


「今までにやったことの無い、慣れていない、新しい考え方とやり方を身に付けなければいけないんだ」

「人は、慣れていないことには、最初、違和感や不快感を感じるんだよ」

「でも、その違和感や不快感を感じながらも、どんなに周りから変な目で見られても、違和感や不快感を感じなくなるまで、『意識しなくても無意識でそう出来るようになるまでやり続ける』という、『覚悟』が必要なんだよ」


「人間は慣れの動物なんだよ」

「今まで慣れ親しんだ、楽な判断や決断、それに伴った楽な行動」


「そういった自分にとって楽な方を選択する生き方から、自分にとって、最初は慣れずに大変な判断や決断、そして行動を、奥さんや子どもたちとの幸せの為に選択して、それに慣れるまでやり続けていくという『覚悟』が必要なんだ」


「この違和感や不快感は、1週間や2週間で無くなるものではないんだ」

「1ヶ月、3ヶ月、半年、あるいは1年、長いものでは3年とか5年とか掛かるものもある」


「でも、人間は慣れの動物だから、やり続ければ、必ずいつかは意識せずとも無意識で出来るようになっていくんだ」


「自転車に乗ったり、車の運転と同じなんだよ」

「その時、その人は本当に変わったと言えるんだ」

「そうなるまで頑張り続ける『覚悟』は、君にあるのか?」


「あります!」


「そうだよなぁ」

「今、1歳の長男、そしてもう直ぐ生まれて来る長女のことを考えたら、こんな所で諦めている訳にはいかないもんなぁ」


「じゃあ聞くけど、直ぐに怒ったり、イライラしてしまう自分をどうやって変える?」


「・・・」


「君は今、俺に教えて貰いたいと思っているよなぁ・・・」


「はい・・・」


「今の君は、素直で謙虚になっている」

「目を見ていればわかる」


「謙虚というのは、『教えて下さい』という気持ちだ」

「そして、その教えて貰ったことを、良いも悪いも無く、全て『はい』と言って、受け入れて、まずはやってみることが『素直な気持ち』なんだ」


「人はとかく、人に注意されても分かった振りをしたり、分かっているつもりになったりする」

「更には、やったらどうなるのかと、やってもいない内から結果ばかり気にして何もやらない人もいる」

「そして、少しやって直ぐに良い結果が出ないと、諦めて人のせいにしたりする人もいるんだ」

「そういう人は、何をやってもダメなんだよ」


「どんなに謙虚になって教えて貰っても、それを良いも悪いも無く、素直に受け入れて、何かの気づきを得るまでとことんやってみる『素直な気持ち』が合わさってないとダメなんだよ」

「謙虚と素直は、セットになって初めてその力を発揮するんだよ」


「わかるか?」


「はい!」


「まずは、その、『謙虚な気持ち』と『素直な気持ち』を持ち続けること」

「いいかい?」


「はい!!」


「では、聞こう」

「君は、何度か教えたことを覚えてくれない後輩や部下に対して、直ぐにイライラしてきつく当たってしまうといっていたよなぁ」


「はい」


「もし、その後輩や部下が、自分の子どもたちだったとしたら、同じようにきつく当たることは出来るのかなぁ?」


「!!!」

「出来ません・・・」


「何度でも、出来るようになるまで優しく教えてあげるんじゃないのか?」


「そうですね・・・」

「出来るようになるまで教えますね」


「人間なんだから、怒る気持ちやイライラしてしまう気持ちが出て来てしまうのはしょうがないことだ」

「でも、それをただ我慢するだけでは、結局どこかでそのストレスを発散しなければならなくなるんだよ」

「それでは、元の木阿弥だろ?」


「そうですね」


「だったら、それをどうやってコントロールするかだと思わないか?」


「はい、そう思います」


「君の所の長男は、もう歩く様になったか?」


「はい、少し歩き始めたところです」

「しょっちゅう転んでますけど」


「子どもは何度も転んで、何度もテーブルに頭をぶつけて泣いたりするよなぁ」


「はい、うちの子もしょっちゅう泣いています」


「でも、親たちはそれをなだめたり、励ましたりするよなぁ」

「そして子どもは、諦めずにまたチャレンジして、次第に歩けるようになっていくんだ」


「一度や二度転んだから、失敗したからと言って、怒るか?」


「怒りませんね」


「そうだよなぁ、歩けるようになるまで励ますよなぁ・・・」

「そして、歩いてくれたら一番喜ぶのは、励まして来た自分たちなんじゃないのか?」


「そうですね」


「俺の言いたいことがわかるか?」


「はい」


「最初は難しいかも知れない、違和感があるかも知れない」

「でも、会社で働く仲間を自分の家族と同じように、大きな家族だと思うんだよ」

「年下なら弟や妹、年上なら兄や姉、俺みたいに歳が離れていたら、親父や叔父、そんな風に考えて、自分の周りにいる人たちはみんな、家族の様な仲間なんだと思うんだ」


「なかなか覚えてくれない後輩や部下は、君に教え方を上達させるチャンスを与えてくれている、仲間なんだと考えるんだ」


「そうすれば、今までより怒ったり、イライラしたりする気持ちは減っていくはずだ」

「最初は大変でも、毎日毎日そう思い続けていれば、次第にイライラではなく、感謝する気持ちが生まれて来るはずなんだよ」


「わかるか?」


「はい」


「今までみたいに、直ぐに怒ったり、イライラたりして、その気持ちを家に持ち帰って行ったら、子どもたちは言葉は分からなくても、雰囲気で察知するんだよ」

「そして、そういう目に見えない小さなものが積り積って行くと、将来の子どもたちのいじめとかに繋がって行ったりするんだよ」


「それで幸せになれると思うか?」

「ハッピーになれると思うか?」


「なれませんね・・・」


「そうだよなぁ」

「それよりも、職場で共に働くみんなが家族の様な仲間で、少しでも良い会社にして行く為に、みんなで役割を分担して力を合わせていけたら、その仲間たちと共に働くこと自体に生きがいや遣りがいを感じられるんじゃないのかなぁ?」

「そうなったら、働くこと自体がハッピーになるんじゃないのか?」


「毎日ハッピーな気持ちで働けたら、家に帰ったらもっとハッピーになれるんじゃないのか?」

「そういう働き方が出来たら良いと思わないか?」


「良いですね!良いと思います!!」


「なかなか仕事を覚えてくれない、後輩や部下も敵ではないんだ」

「仲間なんだ」


「少し不器用なだけなんだよ」

「そういう、少し出来が悪い弟たちを上手く指導出来るようになった時、君は教え上手になっているんだよ」


「はい!」


「では、もう一度聞く」

「今までの慣れた考え方ややり方を変えて行くために、最初は不慣れで、違和感や不快感を持ちながらも、新たな考え方ややり方を、無意識で出来るようになるまで、自分の習慣になるまでやり続けて行く覚悟はあるか?」


「はい!あります!」


「壁にぶち当たって悩む時もあるかも知れない・・・」

「苦しくてどうしようも無くなる時もあるかも知れない・・・」

「三歩進んで二歩下がる時もあるかも知れない・・・」


「それでも大切な奥さんや子どもたちとの幸せのために、変わることを諦めないで頑張り続けていく覚悟」

「その覚悟が、君にあるのか?」


「はい!あります!!」


「よし!君の覚悟は、目を見れば分かる!」

「今の君は、絶対に変われると、俺は信じる!」


「君の『心構え』は、合格だ!」

「そうしたら、次はモティベーションだ」


「君は今、『心構え』で絶対に変わるという決意と、そのために、どんなに不慣れなことでも、慣れるまでやり続けて行くという覚悟を持った」


「それは、会社でも家庭でも、君の人生において、『絶対に幸せになる!』という、未来に対する君の心の準備が出来たと言うことだ」


「では、その心構えに基づいて、今後具体的にどうして行くのかを考えるのがモティベーションだ」

「さっき話した、自分の周りに敵が一人も居ない、全ての人が仲間の世界のことを何と言うか知っているか?」


「・・・」

「わかりません・・・」


「敵が一人もいない、周りの人全てが仲間」

「それを、『無敵』と言うんだ」


「!!!」


「この研修が終わる三日目に、君はその無敵の世界がどんなものであるのかを現実のものとして体現することが出来る」


「モティベーションは、そういう世界を創る為に、君自身が何をどうして行くのかを考えて実践し、身に付けて行くことなんだよ」


「次の試験からは、今俺が話して聞かせた事で、君が感じた想いを、君自身の言葉で話すんだ」

「それが出来た時、君の『心構え』は、より強固なものになる」

「そして、自分自身のものになる」


「その上で、何をどうしていくのかを相手に伝えるんだ」

「わかったか?」


「はい!」


こうして、彼の『心構え+モティベーション』試験の内、『心構え』部分についてのみの合格を俺は与え、次に向わせたのであった。

俺はこの後、もう一人にも同様に『心構え』のみの合格を与えた。


『心構え+モティベーション』の合体試験が始めての試みであったことから、最初は多少の戸惑いもあったが、この時点での俺は、合体方式に何となくの手ごたえを感じ初めていたのだった。


そして、俺自身に掲げていたテーマである、『熱さと強さ』を『優しさ』に変える話し方。

いつもの熱い語り口ではなく、静かに、穏かに、それでも相手の心に響く話し方にも多少の手ごたえを感じ始めた俺なのであった・・・。


(つづく)

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