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2019年12月10日 (火)

俺の道 ~自立編Ⅰ~ (7)

(7)仲間

いつの集会だったかは定かではないが、季節は夏だった。

その時は中規模の3~400台レベルの集会だった。

この頃の俺は、特攻一番機と信号止め、そして走るルート決めは俺に全て任されていた。


この夜は、結果的に中規模レベルの台数となったのだが、当初は内うちの100台レベルの集会の予定で、行き先は吉祥寺だった。

集会の噂を聞きつけて集まって来たり、途中参加して来たりで、吉祥寺に入る頃には、規模が膨らんでいたのだった。


俺はいつも通り先頭を走り、五日市街道を右折して近鉄の前を通り、吉祥寺駅に向った。

そして、吉祥寺駅北口のガード手前の交差点で信号止めをし、後続車両を通過させていたのだ。

俺は、交差点内で停止し、空吹かしで爆音を轟かせていたのだが、その時いきなりあり得ないことが起こったのだ。


エンストだった。


俺は、キックでエンジンを再始動しようとしたのだが、エンジンは掛からなかった。

サンパチにはセルが付いていなかった。

何回キックしてもエンジンは掛からなかった。


俺は、ヤバイと思った。

交差点の斜向かいには交番があったのだ。

『なかよし』でいつも鬼ごっこをしていた警官がいる交番だった。


俺は、後ろに乗っていたN村に押しがけをしようと、後ろから押す様に指示した。

しかし、押し掛けをしてもエンジンは掛からなかった。


交差点の斜向かいの交番から二人の警官が外に出て来て、通過車両に目を奪われていた。

俺は、こっちに気づかれる前にエンジンを掛けようと何度もキックを繰り返した。

しかし、エンジンは掛からなかった。


何台かが俺の横で止まり心配して声を掛けてきた。

その中の1台に頭のI森を後ろに乗せた、特攻隊長のH庄のFXもいた。


俺の周りに数台が溜まったことで、警官がこっちに気づいた。

俺はI森に言った。


「逃げろ!!」


全ての車両が通過した後、俺は1台だけ取り残された形になった。

俺は完全に交番の警官に見つかった。


後ろに乗っていたはずのN村は既に走って逃げていた。

俺はエンジンを掛けようと、ギリギリまで粘ってキックをし続けた。

彼女を置いて行けないと思った。


この当時、特攻服に靴はブーツか長靴の奴が多かった。

しかし、俺一人だけは地下足袋だった。


俺は常に先頭を走り、突っ込んで行く役割だった。

その分パクられる確率も高くなることは覚悟していた。

最悪は走って逃げるしかないと思っての地下足袋だった。

サッカーで鍛えた足と体力には、それなりに自信があった。

だから、ギリギリまで粘った。


交番から二人の警官がこっちに向って走り出して来た。

そして、相手の顔がハッキリ見える距離まで近づいた時、俺は諦めた。

彼女を捨てて走って逃げたのだ。


俺は近鉄前からサンロードに入り、五日市街道方面に全力で走った。

すると、西友の向いにあった寺の暗闇が目に入った。

俺はしめたと思った。

瞬間的に、暗闇の中に隠れることを考えたのだ。


後ろを振り返ると、警官との距離は4~50m位あった。

警官との差は広がっていた。

逃げ切れると思った。


俺は寺の中に走り込んだ。

10m位走ると正面に高さ1m位の垣根があり、先は真っ暗だった。

よし!と思った。


俺は、その垣根をハードルを飛ぶように飛び越えたのだった。

着地したら直ぐに身を潜めるつもりだった。


しかし、その考えは一瞬にして消えたのだった。

そこにあるはずの地面が無かったのだ。

俺は何が起こったのか分からなくなった。


俺は数m落下した。

全身に衝撃が走った。

そして、着地に失敗した俺は呻き声を上げてしまった。

辺りは真っ暗闇だった。

自分がどうなっているのか全く分からなかった。


気づくと俺は、上から光を当てられ、押さえつけられていた。

俺は、二人の警官に敢え無く御用となったのだった。


しばらく俺は立ち上がれなかった。

俺が落ちた所は、地下駐車場への入口だった。

見上げると俺は、垣根の上からだと3~4m落ちたようだった。

落ちた先もコンクリートだった。

俺は運良く、特攻服を多少破いた程度で、大きな怪我はしていなかった。


俺は、パトカーで三鷹警察に連行されたのだった。

そして、夜通し仲間の名前を尋問されたのだが、俺は黙秘を貫いた。


更に、言わなければ今夜も泊って行って貰うことになるぞと脅された。

しかし、俺はそれならそれでいいと覚悟し、そう答えた。


朝になり、親元の連絡先を聞かれ、俺は答えた。

そして、警察から親元へ連絡されたのだ。

しかし、電話に出たのはおばあちゃんらしく、三鷹警察と言った瞬間に電話を切られたと教えられた。


俺は声を上げて笑った。

おばあちゃんらしいと思ったのだ。

あの人はそういう人だった。


俺は、何日でも泊っていってやると言った。

朝7時を過ぎた頃、警察は諦めて俺を解放すると言った。


今がどうなのかは分からないが、当時は基本的に現行犯じゃないとパクれなかった。

俺は、走っているところを捕まったのではなく、見つかった時はエンジンが止まった単車に跨っていただけだったのだ。

仲間の名前を出して、『協同危険行為』にしないとパクれなかったのだ。

更には、サンパチは違法改造車ではあったが、それも走っていた訳ではないのだった。

警察は、交通違反のキップさえ切れなかったのだ。


俺のサンパチは、吉祥寺から三鷹警察署まで運ばれていた。

そして、絶対に乗って帰るなよと注意され、俺は押して帰ることになったのだった。

しかし、どうせエンジンは掛からないだろうと思っていた。

昨夜あれだけやって掛からなかったのだ。


しかし、明るい所で、特攻服姿でとぼとぼと派手な族車を押す俺の姿はみっともなかった。

そして、情けなかった。

まるで、翼をもがれた鳥のようだった。


一晩中尋問され続け、一睡もしていなかったことで疲れてもいた。

家まで押して行くことを考えると気が遠くなった。

俺は、最初の交差点を曲り、警察署から見えなくなった所で、念のためと思いエンジンを掛けてみた。


「バリバリバリバリ・・・・・・」


驚いたことに、前夜あれだけキックし押し掛けまでして掛からなかったエンジンが一発で掛かったのだ。

この瞬間、俺は生き返った。

俺の彼女は、何を拗ねていたのか・・・。


時間は既に8時を過ぎていた。

白バイの出動時間だった。

俺は、白バイに出くわさないことだけに注意し、裏道で帰路についたのだった。


帰宅すると俺んちの前の駐車場は族車で一杯だった。

そして、玄関ドアを開けると、中には頭のI森を中心に花小金井の大半の奴らが全員で雑魚寝をしていた。

その中には先に逃げたN村の顔もあった。

俺はN村が無事逃げ切っていたことを知って安心した。


そして、みんなの寝ている姿を見て俺は思った。


「待っているなら起きて待ってろよなぁ・・・」

「でも、心配して待っていてくれただけ上等かぁ・・・」


この時の俺は少しだけ嬉しくなったのだった。

そして、俺は全員を起こすべく、怒鳴って言ったのだ。


「帰ったぞーーーーー!!」


頭のI森が目を覚まし、眠そうに目を擦りながら言ったのだった。


「大丈夫だったかぁ?」


俺は大声で言ったのだった。


「全然大丈夫じゃねーよ!!」

「でも、誰の名前も言ってねーから安心しろ!!」


みんな安堵の顔なのであった。


この後、俺は何度か集会で彼女を捨てて逃げることになるのだった。

そして、警視庁内での俺の名は上がって行ったのだ。


先頭は、検問を張られていても、止まったり、Uターンは出来ないのだ。

台数が多くなればなるほどそうだった。


検問やバリケードを張られていても捨て身で突っ込むしかなかったのだ。

一度だけだが、俺は後ろの奴を下ろし、単身で突っ込んだことがあった。

検問のバリケードの直前に俺は彼女から飛び降り、彼女を一人突っ込ませたのだ。


そして、そこを突破口に仲間たちは検問を破ったのだ。

俺は、彼女を捨て、後ろから来た奴の3ケツになり逃げたのだ。


その時彼女は、第八交通機動隊に没収された。

そして俺は、八交機の指名手配になったのだった。

1ヶ月ほど時間は掛かったが、後に俺は彼女を取り戻した。

戻って来た彼女は傷だらけだった。


今では考えられないようなめちゃくちゃさだった。

しかし、当時の俺は、それが俺の生きる道だったのだ。

そして、いつしか俺の後ろには、誰も乗らなくなったのだった。


(つづく)

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