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2020年1月28日 (火)

俺の道 ~自立編Ⅰ~ (21)

(21)出所祝い

釈放された俺の頭の中は、Y崎さんを半殺しにすることしか考えていなかった。

時間的には、まだ16時前でみんな仕事場にいると思った。


俺は、小金井署を出てから武蔵小金井の駅まで走った。

そして、武蔵小金井駅から東小金井駅まで電車で行った。


東小金井駅に着いて、俺はまず駅前の交番に行った。

すると、年配の警官が俺の顔を見て言ったのだ。


「おー、やっと出て来たか!良かったな!」

「しかし、派手にやってくれたもんだよ!」


俺は、ぺこりと頭を下げて聞いた。


「あの若い人は?」

「お前にやられた彼か?」


「はい」


「あいつは、お前に一方的にやられたから、自信失くしてさ、移動になったよ」


検事が言っていたことと同じだった。


「そうだったんですか・・・」

「もし、会うことがあったら、俺が謝ってたって伝えて下さい」


俺は、そう言って交番を後にしたのだった。


そして、貨物駅の構内に入って行った。


構内では、まだ米下ろしの作業を行っていた。

俺が歩いて近づいて行くと、後輩のM田とK村が俺を見つけ走り寄って来て言った。


「先輩、大丈夫だったですか?!」


「あぁ、なんとかな」


俺は大人たち一人一人に留守にしたことを詫びた。


パクられた時一緒だったSさんは、凄く心配してくれていた。

俺が居なくて大変だったと言ってくれた。


俺は、事務所にいるN谷社長の所に行った。

N谷社長に詫びると、N谷社長は笑いながら頭に軽い拳骨を一発くれた。


みんなに詫びている内に俺のY崎さんへの怒りは少し和らいでいた。

N谷社長への挨拶を終えた俺は、トーケンに向って歩き出した。

トーケンに向いながら、またY崎さんへの怒りがふつふつと湧き上がって来たのだった。


トーケンの控室の扉を俺が開けると、中はいつも通りで、既にみんなは飲んでいた。

そして、俺の顔を見るなり、みんなが歓声を上げたのだった。


みんな、良かった良かったと言い、俺はもみくちゃにされた。

そして、ビールを注がれて俺は飲んだ。


すると、ソファに腰かけていたY崎さんの顔が目に入った。

Y崎さんは、ニタニタ笑っていた。


その顔を見た俺は言った。


「Y崎さん!何であんたが先に出てんだよ!!」


Y崎さんは言った。


「しょうがないだろ、そうなっちゃったんだから」


俺は、続けて言った。


「あんたが石さえ投げなければこんなことにはならなかったんだよ!」


「しょうがないだろ、投げちゃったんだから」


「じゃあ、なんで先に出たこと教えに来てくれねーんだよ!」


「しょうがないだろ、警察に来るなって言われたんだから」


俺は、Y崎さんのしょうがないだろう攻撃に反論出来なかった。

歯がみするしかなかった。

そして俺は言ったのだ。


「俺はなぁ、あんたを守ろうと思って、自分のやったことしか言わなかったんだぞ!」

「あんたが石を投げたことは言わなかったんだぞ!!」

「それで俺は長引いたんだぞ!!」


Y崎さんは言った


「それは、悪かったって、謝るよ」


そして、続けて笑いながら言ったのだ。


「しかし、お前もバカだよなぁ・・・」

「お前は、正直過ぎるんだよ」

「俺のことを守ろうとすることなんかなかったんだよ」

「でも、お前が仲間思いな奴だってことは分かったんだからさ、それで良いじゃない」


俺はY崎さんにビールを注がれ、それを飲むしかなかった。

俺のY崎さんへの怒りはこうして収めるしかなかったのだった。

そして、この年のクリスマス・イブは、みんなで俺の出所祝いとなったのであった。


(つづく)

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