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2020年1月14日 (火)

俺の道 ~自立編Ⅰ~ (17)

(17)修行僧

地検から戻り、拘留延長となった俺は、それから新たな闘いが始まった。

それは、寒さとの闘いだった。


パクられた時の俺は、引っ越しセンターのグリーンの作業服の上に丈の短いジャンパー1枚だった。

その時は12月でも、まだそれほど寒くはなっていなかったのだ。


しかし、12月も中旬になり、日に日に寒さが増して来たのだった。

寝具は敷布団に毛布一枚と枕一個だけだった。


夜中に寒くて目が覚めると眠れなくなった。

そして目覚めると、誰かが谷村新司の『昴』を歌っていた。

俺は思った。


「こんなところで、昴なんか歌ってんじゃねーよ!」


でも、歌は下手では無かった。

『昴』の歌は、毎晩続いた。


俺は、今でも『昴』を聞くと、この留置場生活を思い出してしまうのだ。

しかし、歌としては嫌いな訳では無かった。


俺には夜の寒さの他に、もう一つ辛いことがあった。

毎日風呂に入れないことだった。


俺は大の風呂好きなのだ。


留置場では、正確には憶えてないが、風呂は3~4日に一度だった。

それも、決められた時間の短時間で、身体を洗うだけで湯船に浸かっている時間はなかったのだ。

記憶は定かではないが、10分も無かったように思う。


そして、差し入れを拒否した俺に着替えは無かった。

冬場だったから良かったが、夏場だったら耐え難かったかも知れない。


留置場内では、本当に何もやることがなかった。

大人たちの出入りは多かったが、少年で入って来る奴は一人もいなかった。


俺は日中、誰とも話さず、敷布団を座布団代わりに床に敷き、その上に毛布を被って壁にもたれかかり、看守の目を盗んでは、夜眠れない分の睡眠を取った。

日中は横になったり眠ったり、動きまわったりすると注意されたのだ。

ただ、じっと座っているだけだった。


腕立て伏せと腹筋だけは、これも看守の目を盗んではやっていた。

腕立て伏せと腹筋は毎日数え切れないほどやっていた。

大して旨くも無いはずの丸警弁当がめちゃくちゃ旨く、唯一の楽しみだった。


食うこと、寝ること、腕立て伏せと腹筋。

それだけだった。

まるで修行僧のようだった。


(つづく)

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