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2020年2月 8日 (土)

俺の道 ~自立編Ⅰ~ (27)

(27)夢幻の如くなり

二日間の休みを終え、向えた2月1日、この日から俺は、Sさんとやっちゃ場仕事の開始なのであった。

俺はY本さんの元で一ヶ月間学んだことを実践する喜びに溢れていた。


潮留には一番乗りだった。

俺は教えられていた通り、金港市場の伝票をゲットしたのだった。


17時過ぎ、貨物が入って来て、俺は伝票を持って走り、金港市場の積荷の貨物を見つけ、Sさんに運転席側を貨物に付けるように指示したのだった。

貨物の扉を開け、Sさんはトラックを横付けした。


Sさんがトラックを下りて荷台に来ると、いきなり悲鳴を上げたのだった。


「これを二人でやるの?!」


「そうだよ」


俺は、普通に答え、俺がY本さんに教えて貰った通り、Sさんには下から2段目と3段目の2個で足場を作ってくれるようにお願いしたのだった。


俺が上の4段と一番下をやるからと。

しかし、Sさんは積荷の量の多さに驚いたまま、既に戦意喪失状態だった。


とにかく俺は、やるしかないとSさんにはっぱを掛けながらやったのだが、半分も終わらない内にSさんはギブアップなのだった。


俺は仕方なくSさんを休ませ、一人で積み込み作業をやったのだった。

流石に俺も、一人でほとんど全ての積み込みをやったのは初めてでかなりきつかった。

時間もいつもの倍以上掛かった。

弟さんは、いつもこれを一人でやっていたのかと、俺は驚きと尊敬の気持ちになった。


積荷をロープで縛り、最上段から3~40個のみかんを抜いて、シートを掛けて、俺とSさんは、いざ金港市場へと向ったのだった。


予定の時間より、既に1時間以上遅れていた。


金港市場へ向う車中、Sさんはおもむろに俺に言い出したのだった。


「ごめん・・・」

「俺、辞めるよ・・・」

「俺には無理だわ・・・」

「今日はこれが終わったら帰ろう・・・」


俺は、何とかSさんを励まそうと色々なことを言ったのだが、無駄だった。

Sさんの心は完全に折れてしまったのだった。


金港市場に着くと、俺はSさんをトラックで休ませ、下ろしの作業は俺一人でやったのだった。


俺は、この後どうするかを考えた。

積み込みも下ろしも俺一人でやり、Sさんには運転だけやって貰うことも考えた。


しかし、Y本さん兄弟でさえ運転と下ろしがY本さん、積み込みは弟さんと役割分担でやっているのだ。

更には、他社ではほとんどがトラック一台に対して、3人のチームなのだった。


俺は、俺一人が頑張っても限界があると思った。

仕方なく、この日は金港市場の1回で帰ることにしたのだった。

そして、俺はSさんと一緒に翌朝8時に、N谷社長に相談することにしたのだった。


翌朝、俺はSさんと共にN谷社長に相談したのだ。

そして、N谷社長の下した決断は、撤退だった。


なんと、俺の日給15,000円は、一夜にして幕を閉じたのであった。


俺がY本さんに教えて貰った一ヶ月間は、水泡に帰したのだ。

そして、この日から俺とSさんは、元の東小金井貨物駅構内の作業へと戻ったのであった。


しかし、今振り返っても、このやっちゃ場仕事は、当時俺がやった仕事の中では、一番きつい仕事だった。

また、きつい分充実感もあり、楽しくもあった。

そして、その仕事をY本さんの下でやり切ったことは、当時の俺にとっては物凄い自信になったのであった。


しかし同時に、当時は気づかなかったが、多分当時の俺は、きっと物凄く残念な気持ちだったのではないかと思ったのだ。

17歳になったばかりの俺が、あれだけ一生懸命にやって覚えた仕事を、運転手の力量不足があったとは言え、たった一日で諦めなければならず、最後までやり切ることが出来なかったのだ。


自分の残念な気持ちやがっかりな気持ち、悔しさとか悲しさとか、自分一人の力だけではどうにもならない現実、そして、それに対する無力感とか、当時の俺は全く気づくことは出来なかったのだ。

それだけ一生懸命に、無我夢中にやっていたのだ。


今、『自己受容』ということを学んでいる中で、当時の俺のそういう気持ちを改めて受け止めてあげたいと思う、今の俺なのであった。


(つづく)

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