俺の道 恋愛編

2019年11月 2日 (土)

俺の道 ~ 恋愛編 ❤ 第一部 ~ <番外編> (2) 『完』

(2)卒業

駅に向って歩きながら、主演の樋口麻美さんの演技に驚かされたことを俺は遥ちゃんに話した。

そして、駅前の信号に差し掛かった時、俺はつぶやいた。


「タバコ吸いてぇ~」


「そうですよねぇ~」


遥ちゃんも同じだった。

俺は喫煙所を探した。

周囲には見当たらなかった。


俺は、遥ちゃんに声を掛け、駅の近くに居た係員のような人の所へ小走りで聞きに行った。

すると、この駅に喫煙所はないとのことだった。

俺がしばらく東京に来ていない内に、東京は喫煙にかなり厳しくなっている感じがした。


遥ちゃんの所に戻り、喫煙所が無いことを話すと、遥ちゃんは言ったのだった。


「何処か喫茶店にでも入りましょうか」

「ミュージカルのことも話したいし」


俺たちは駅の反対側まで歩き喫茶店を探した。

しかし、今度は喫茶店が見つからなかった。

目に入って来たのは居酒屋だった。


そして、居酒屋を通り過ぎた後、遥ちゃんが言ったのだった。


「一杯だけ飲みましょうか?!」


「俺はコーヒーよりそっちの方が良いけど、仕事の方は大丈夫なの?」


「少しなら大丈夫です!」


「じゃあ、一杯だけね」


俺たちはUターンし、さっき通り過ぎた居酒屋に入った。


俺は生ビール、遥ちゃんはサワー、それとちょっとしたつまみを頼んだ。

昼間だと言うのに店は結構一杯だった。

食べ物も飲み物も、全て3~400円で、俺は随分安い店だと思った。


俺と遥ちゃんは、直ぐにタバコに火を着けたのだった。

一服して、俺はやっと落ち着いた。


直ぐに飲みものが運ばれて来た。

俺たちは乾杯をした。

二人とも一杯目は直ぐに空いてしまい、2杯目を注文した。

俺は、生からハイボールに変えた。


遥ちゃんは、俺にチケット代を払おうとした。

俺は、良いよと拒んだのだが、遥ちゃんは引かなかった。

そこで俺は言った。


「じゃあ、ここの飲み代ご馳走して」


遥ちゃんは笑顔で納得してくれた。


俺たちはミュージカルの話しはそこそこに、話題は研修に関することになった。

遥ちゃんがトイレに立ち、時間を見ると既に16時を過ぎていた。

俺は席に戻った遥ちゃんに時間は大丈夫か聞いた。

遥ちゃんは、もう少しならと答え、俺たちの杯は進んだ。

俺はTとの約束が気になっていた。


俺は、9月の研修で、自分の中に大きな変化があったことを話した。

そして、そのきっかけが遥ちゃんであり、そのことを小説風に書いたことも話した。

すると、彼女から思いがけない言葉が出て来た。


「じゃあ、その小説が売れたら、印税の1%を私に下さいね」


俺は内心、そういうのじゃないんだけどなぁと思いながらも了解した。

そして、俺は思ったのだ。


「あ、ブログに出しても大丈夫だな」

「ま、見つかりはしないだろうしな」

「バレたらバレたで、なんとかなんだろ」

「しかし遥ちゃん、印税の1%って、案外そういうところはしっかりしてんだなぁ・・・」


俺はこの時、『恋愛編』を最終的にブログにアップすることを決めたのだった。

そして、遥ちゃんが2度目のトイレに立ち、時間を見ると既に17時近かった。

トイレから戻った遥ちゃんに俺は再度時間の方は大丈夫なのかを聞いた。

するとまたもや遥ちゃんは、もう少しならと答えたのだった。


俺はTとの約束が気になっていた。

もうそろそろ終わるだろうと思い、俺もトイレに立った。

そして、俺はTにLINEで状況を連絡した。


トイレから戻ると、遥ちゃんは更につまみを頼んでいたのだった。

既に互いに4~5杯ずつ飲んでいて、俺はほろ酔いだった。

そこから互いにエンジンが掛かった感じになってしまったのだった。

遥ちゃんは、「絶対に言わないで下さいよ!」を連発しながら、会社や研修に対する自分の思いを話してくれた。

俺も、「絶対に内緒だよ」と言いながら本音を話した。


また、遥ちゃんは、以前自分が出演したミュージックビデオを見せてくれた。

そこに映っている遥ちゃんは別人のようだった。


気づくと19時近くになっていた。

俺は、Tとの約束は無理だと判断した。

俺はトイレに立ち、LINEでTに連絡したのだった。


トイレから戻った俺に遥ちゃんは言ったのだった。


「こんなんなら、麻布十番のお蕎麦屋さん行けば良かったですねぇ~」


「そうだねぇ・・・」


俺はそうとしか答えられなかった・・・。

内心では、それは俺の台詞でしょうと思いながら・・・。


その後、会話の中で、俺が遥ちゃんと付き合っているだろうと思っていたKのことを、遥ちゃんが良く言わないことが何度かあった。

そして途中、Sちゃんから遥ちゃんにLINEが来た。

俺がどうしたのか聞くと、どうやらKたち数人がWさんの店で飲んでいて、KがSちゃんから遥ちゃんを誘って一緒に来て欲しいと連絡が来たという内容だと遥ちゃんは言ったのだった。


それを聞いた俺は少しおかしいと思った。

「Kが遥ちゃんと付き合っているなら、直接連絡すれば良いのに・・・?」

「もしかして、二人はまだ付き合っていないのか??」


そう思った。

しかし、直ぐにそんなことはどっちでも良いと思った。

『恋愛編』を書き上げた俺の遥ちゃんに対する想いと対応は既に決まっていたのだ。


俺は遥ちゃんが誰と付き合おうと、遥ちゃんが幸せならそれでいいと思っていた。

そして、俺のその想いは、もう『恋』ではなく、『愛』に近いものなのではないかと思っていたのだ。

人間としての愛に・・・。


結局俺たちは22時までその居酒屋で飲んだのであった。

お会計は俺がトイレに行っている間に遥ちゃんが払っていた。

店に入ったのが15時過ぎだったから、なんと7時間近くも飲んでいたのであった。


俺たちは一緒に帰路についた。

そして、俺たちは東西線に乗った。

俺は日本橋での乗り換えだった。


電車の中で何を話したのかは覚えていないが、俺が降り際に遥ちゃんは加藤茶を引き合いに出し、何やら俺は励まされたのであった。

そして、降りる際に握手をして、俺は電車を降りたのだった。


電車を降りた俺は彼女に向って小さく手を振っていた。

彼女も手を振り返してくれた。

そして、直ぐに発車すると思っていた電車は直ぐに発車しなかったのだ。

俺は、降りた人たち全てが居なくなった後も小さく手を振り続けた。

彼女もそれに応えて手を振り続けてくれた。

30秒か、1分か・・・。


何故か、その時間が妙に長く感じた。

その時、俺はある光景を思い出した。

18歳になる少し前から同棲した彼女のことを。

その彼女は、茨城の日立の子だった。


同棲する前の彼女は、毎週末俺に会いに来た。

そして、1~2泊して日曜の夜、俺は上野駅まで彼女を送って行った。

時にはハグをし、時にはキスをして発車のベルで車内と車外に別れ、電車が発車し、彼女の顔が見えなくなるまで俺は手を振っていた。

その時の光景を俺は思い出したのだった。


その彼女との別れは良いものではなかった。

ある日、彼女は突然姿を消したのだ。

俺に内緒で、俺の名前で組んだ化粧品のローンを沢山残して・・・。


彼女と別れた後の俺は、遠距離恋愛時代のことを一度も思い出したことは無かった。

しかし、何故か思い出したのだ。


遥ちゃんに手を振っている自分が、まるで遠距離恋愛をしているような錯覚に襲われた。

そして、遥ちゃんが乗った電車が発車した後、俺は彼女にLINEを送った。


「なんか昔の遠距離恋愛みたい」


きっと彼女には何の意味か分からなかっただろうと思った。

でも、それでも良かった。


昔の自分を思い出し、俺にもそういう時代があったんだなぁと思えただけで、何やら自分が若返ったような気になったのだった。


そして、俺は浅草線に乗り換えるべく、歩き出した。

途中にトイレがあり立ち寄った。

そして、俺は浅草線に向ったのだった。

しかし、着いたホームは、さっき遥ちゃんに手を振っていたホームだった。


俺は一瞬、狐につままれたような気持ちになった。

そして、自分が酔っていることに気づいた。

すると何やら自分が可笑しくなり、俺は声を上げて笑った。

結局、その日俺が帰宅したのは、午前1時近くになったのであった。


その後の俺は、1週間程はそれまでと変わらない感じで遥ちゃんにLINEを送った。

そして、徐々に距離を取るようにしたのだった。


こうして俺は、無事、遥コーチから卒業したのであった。


しかし、ここでもまた、俺は気づかせて貰った。

10代で初めての同棲相手に対する俺の捉え方が変化したことに。

別れた後は、どうしても出会った頃の記憶より、別れた頃の記憶の方が強く残っている。

それは、決して良いものではない。

しかし、こうして記憶が呼び起こされ、良かった時のことを思い起こされると、全てがあれで良かったんだと思えて来る。

そして、未熟だった自分を反省する気持ちも生まれて来る。

すると、これからの未来に対する新たな希望が湧いて来るのだった。


バツ2になってから2年位経った頃だった。

ある日、車を運転している時にラジオから突然聞こえてきた言葉だった。

俺は、その言葉に衝撃を受け、思わず車を停めて、その言葉をメモした。


   男は

   判断力の欠如によって結婚し

      忍耐力の欠如によって離婚し

         記憶力の欠如によって再婚する


俺は思うのだった。

俺の人生、『二度あることは、三度ある』の人生となるのか?

それとも、『三度目の正直』となるのか?


人生、何があるか分からない!

だから、面白い!

俺の人生、まだまだこれからだ!!


俺の道 ~恋愛編❤第一部~ <番外編> 『完』

2019年11月 1日 (金)

俺の道 ~ 恋愛編 ❤ 第一部 ~ <番外編> (1)

(1)ミュージカル『鏡の法則』

俺は、最終的に9月14日に本編の『恋愛編』を書き上げたのだった。

そして、21日に遥ちゃんと観に行く約束をしていた、ミュージカル『鏡の法則』まで、残り一週間となったのだった。


俺は、恋愛編を書いて行く中で、この小説を彼女に渡さないと決めた。

しかし、心の片隅では、読んで欲しいという想いは完全には消せていなかったのだ。

俺はこの日、書き上げた『恋愛編』をPDFにした。

そして、表紙と目次も作り、それもPDFにしたのだった。

A4用紙で100ページを超えた。


俺にしたら初めての大作だった。

そして、俺に『ゆるし』の次のステップである、『自己受容』の必要性と大切さに気づかせてくれた。

そして、俺の自己受容を短期間で急速に進展させてくれたのだ。


読者はまだいない。

しかし、思い入れはひとしおなのだった。


小説を完成させた俺には、最後の難関があった。

それは、遥ちゃんへの確認だった。

そう、遥ちゃんとのミュージカルを観に行く約束は、あくまで『仮』だったのだ。


俺は以前、不動産の売買を生業としていた。

中古のマンションや戸建住宅を買い取り、リフォームをして販売をするのだ。

買主になり、そして売主になった。

両方の立場になるということは、両方の気持ちがわかるということだ。

買う時は安く買いたい、売る時は高く売りたい、それが人情なのだった。


不動産は、申し込みを貰おうが、契約をしようが、所有権が移転する最後の最後まで何があるか分からない商売だった。

だから、不動産もある意味では『水商売』なのだ。

契約をしたからといっても喜んではいられない商売だった。

契約段階で喜び過ぎると、後で『ぬか喜び』となることが多いのだ。


今回の遥ちゃんとのミュージカルの約束は、あくまで『仮契約』みたいなものだったのだ。

仕事が入って行けなくなる可能性もあるのだ。

それなのに俺は、この1ヶ月、大喜びしてきたのだった。


脳裏には、最悪の場合、親友Tを誘って、おっさん二人で行くミュージカルが何度となく思い浮かびながらも、それを打ち消し続けて来たのだ。

いよいよその最終確認をしないといけない時期になってしまったのだった。


俺は、9月10日の研修で会ったのを最後に、遥ちゃんには連絡をしていなかった。

16日の昼頃、俺は意を決して遥ちゃんに確認のLINEを送った。


「21日は大丈夫そう?」


直ぐに彼女から返事が来た。


「そうです!お伝えせねばと思っていたのに忘れちゃってました(泣マーク)」


その言葉を見た瞬間、俺は思った。


「やっぱ、ダメかぁ・・・」


そして、Tの顔が頭をよぎった。

しかし、その後に続いた言葉に目を見張った。


「行けます!!」


俺は天にも昇る気持ちになった。

そして、俺は思ったのだった。


「なんであそこで泣きマークなんだよぉぉぉ・・・」

「はぁ~、ビックリしたぁ・・・」

「でも、良かったぁ~」


そして、俺は彼女と、21日12:15に西葛西駅で待ち合せることにしたのであった。


翌日にミュージカルを控えた前夜、俺にとっては予想外の事が起こったのだった。

それは、俺から、「明日はよろしくね~」と送ったLINEの返信だった。


俺は、ミュージカルを観た後、西葛西から麻布十番に移動して、昔行き付けだった蕎麦屋で遥ちゃんと一杯やる約束をしていたのだった。

俺は、自分が気に行った人は、男も女も、必ずこの蕎麦屋に連れていくのだ。

そして、この蕎麦屋に行った人とは必ず良い関係になっていたのだ。


遥ちゃんから送られて来たLINEには、やらなければいけない仕事が終わらず、ミュージカルの後の時間が取れなくなった。

そして、飲みはまた後日お願いしますとのことだったのだ。


俺は、何事も無い風を装ってLINEに返信した。

しかし、内心はそうではなかった。

大ショックだったのだ。


俺にとっては、ミュージカルも凄い楽しみだったが、それ以上に飲みの方が楽しみだったのだ。

普段研修の時には話せない様な話をしたいと思っていたのだったのだが・・・。

俺の夢は脆くも崩れ去ったのであった・・・。


21日の朝、俺はTにLINEを送った。


「今日の夕方時間ある?」

「飲みたいんだよね」


俺としては、ヤケ酒の気分だったのだ。

TはO.Kしてくれた。

Tの住まいは横浜駅から徒歩圏内だった。

ミュージカルは、13~15時だから、16~17時には横浜に着けると連絡した。

Tには、ミュージカルが終わって、横浜駅着の時間が分かったら連絡することにしたのだった。


俺は12時ちょっと前に西葛西駅に到着した。

タバコを吸いたかったが、近くに喫煙所が見当たらず、俺は遥ちゃんを待つことにしたのだ。

彼女は、12:15よりほんの少し遅れて到着した。


彼女は黒のニットにエルメスのスカーフのようなロングスカートにショートブーツという出で立ちだった。

スカートの裾がピーターパンのように縦にカットされていて、何か凄くカッコ良く見えた。

髪型はポニーテールではなかった。

何と言うのか分からないが、サイドからトップの方だけをまとめ、肩口はふわっとした感じの髪型だった。

俺は、こっちの方が可愛いと思った。


彼女は妙に大きめのトートバッグを肩から下げていた。

俺は内心で思った。


「昨夜は彼氏のところにでもお泊りだったのかなぁ・・・?」


俺の経験からすると、女性が大きめのバッグを持っている時は、大概はお泊りだと思っていたのだ。


遥ちゃんは、そのバッグをコインロッカーに入れたいとコインローカーを探した。

改札から少し離れた場所にコインローカーはあった。

遥ちゃんがコインローカーにバッグを入れようとした時だった、中には大きめのノートPCが見えたのだった。

そして、俺は思ったのだ。


「なんだぁ、お泊りじゃなかったのかなぁ・・・」


そんなことは俺には関係がないはずなのに、そんな勘繰りをしている自分が俺は嫌だった。


俺たちは、途中のコンビニで飲み物を買って、目的地へと向った。

目的地は、『東京映画・俳優&放送芸術専門学校』という所だった。

コンビニを過ぎると直ぐだった。

駅から5分と離れていなかった。


俺は入場券を渡し、俺たちは会場に入ろうとした。

その直前に俺はパンフレットに気づき買おうとした。

金額は2,000円だった。

金額を聞いた瞬間、ちょっと高いと思ったが、まぁ良いかと2冊頼んだ。

俺が2冊分払おうとしたのだったが、遥ちゃんは慌てて自分の分を出したのだった。


その姿を見て、俺は思ったのだった。


「遥ちゃんは、最初から買う気無かったのかなぁ・・・」

「なんか悪かったかなぁ・・・」


会場に入ると、会場は意外に狭く、客席まで行くのに一度舞台に上がってから行くようになっていた。

長方形の空間の真ん中に4~5m幅の舞台が斜めに配置され、残された三角スペースが客席だった。

客席は舞台の両サイドを挟む形で配置され、向いの観客の顔が見える状況だった。

前2列が指定席で、3列目から後ろが自由席になっていた。

一番舞台から遠い席でも5列目だった。

俺たちは3列目の真ん中の通路側の2席にした。

見易さを考えて、俺は遥ちゃんを通路側にしたのだった。


客席は、ざっと見て200席程度だと思った。

席に着くと、遥ちゃんはトイレに行くと言って席を立ったのだった。

少ししてから、遥ちゃんが帰ってきたら、俺もトイレに行っておこうと思った。

しかし、遥ちゃんは直ぐに帰って来なかったのだ。


俺は女性だからトイレが混んでいるのかと思った。

しばらくして遥ちゃんが帰って来て聞いたのだった。


「遅かったねぇ、トイレ混んでた?」


すると予想外の言葉が帰って来たのだ。


「混んではいたんですけど、外でタバコ吸って来ました」


俺は思った。


「なんだよぉ・・・」

「それなら俺にも一声掛けてくれれば良いのにぃ・・・」


俺は家を出てから1本も吸っていなかったのだった。

それに気づいた俺は、無性に吸いたくなった。

俺もトイレに行った。

するとトイレは一人用の個室で、男子トイレも並んでいたのだった。

開演時間はもう直ぐだった。

俺はタバコを諦め、トイレだけ済ませて席に戻った。


俺が席に戻ると直ぐに開演になった。

ミュージカル自体は、主演の樋口麻美さんの演技に俺は驚かされた。

涙を流し、鼻水まで垂らしながらも歌声には一切のブレがないのだ。

プロだと思った。

その姿に俺は涙した。

俺もそう在りたいと思った。


ストーリーは原作に沿ったものだったが、原作と大きく違っていたのは、主演の妻『栄子』に気づきを与えるコンサルタントの『矢口』だった。

ミュージカルの『矢口』はぶっ飛びだった。

ある意味、『壊れている』とさえ思えるほどだった。

親父ギャグの連発だった。

しかし、それが笑いとなり、泣きだけの湿っぽいものにはならないアクセントになっていた。


俺は原作を読んだ時は号泣だった。

何度も涙で読み進めなくなった。

だから、ミュージカルには、BOXティッシュとハンドタオルを持って行っていた。


俺は何度か主演の樋口麻美さんの演技に涙した。

そして、隣の遥ちゃんを見ると、彼女は涙している様には見えなかった。


ミュージカルが終わると、指定席の最前列の人たちだけが舞台上に上り、出演者の方々との集合写真の撮影が行われた。

俺は、指定席と自由席に左程違いがないのに、値段の違いは何なのかと思っていたのだが、その時その理由が初めてわかったのだった。


ミュージカルが終わり、俺たちは直ぐに外に出た。

そして、駅に向って歩き出した。

俺は思ったのだった。

これで、遥ちゃんとのことは全て終わりだなと・・・。


(つづく)

2019年10月30日 (水)

俺の道 ~ 恋愛編 ❤ 第一部 ~ (33) <最終回>

(33)道は開ける?!

MISIAの『アイノカタチ』の「あれっ?!」、「えっーーーーー!?」のシンクロをきっかけに、『鏡の法則』のミュージカルチケット獲得後の俺の内面の変化は、俺の予想だにしない展開をして来た。


特に8月中旬からの3週間は、怒涛のような3週間だった。

この小説を書きながら、知らぬ間に本当の自分と巡り会い、何度となく涙した。

この小説は、間違いなく今後の俺を変えていく第一歩になると思う。


きっと、羊から山羊くらいには成長出来るのではないかと思う。

俺は時々、悩んでいる人に対し、この言葉を贈っている。


『 Where there is a will , there is a way 』(意思のあるところに、道は開ける)

今の俺は、俺自身に贈ってあげたいと思っている。


そして俺は、『俺が主夫になる』という方法論を得たことで、これまで閉ざされていたはずの扉の片側は、既に開かれたものと思っている。


あとは、残りの片側の扉を開け、真っ直ぐに突き進んで行く為の『勇気』『情熱』なのだろうと思うのであった。


この先、俺の人生に待ち構える、『困難』や『喜び』はどのようなものになるのか?!


この物語の続きを楽しみにしている読者は、まだいない。


しかし、この物語の『主人公』は、きっとこの続きを一番楽しみに期待しているのではないかと思う俺なのであった。


『俺の道』 ~ 恋愛編 ❤ 第一部 ~ (完)

2019年10月29日 (火)

俺の道 ~ 恋愛編 ❤ 第一部 ~ (32)

(32)歳の差婚の勇気

俺が大好きになった大切だった人たちは、なぜか歳の差婚が多かった。

バツがある人もいれば、無い人もいるが、大半はバツがあるのだ。


40歳の時に18歳の奥さんを貰ったIさん。

40代半ばに12歳下の奥さんを貰ったGさん。

W不倫で、30代前半に21歳上の旦那さんに嫁いだMさん。


そして、芸能人としては、加藤茶の45歳差を筆頭に、市原正親と篠原涼子の24歳差とか、石田純一と東尾理子の22歳差が有名だ。


俺は、そういう人たちをめちゃくちゃ羨ましく思っている。

しかし反面、凄い勇気だとも思うのであった。


俺もこれまでの経験としては、35~40の頃、何人かの1回り以上年下の子、最大19歳下の子と付き合ったことはあった。

しかし、みんな何を考えているのかが分からず、3ヶ月程度が限界だった。


そういうことを考えると、年上側は単なる欲望だけでは、歳の差婚のプレッシャーからは逃れられないと思うのだ。


年上側の受け入れる勇気。

そして、年下側の飛びこむ勇気。

俺は、ずっとそう考えていた。


しかし、ここまで書いて来て、それが少し違う様な気がして来た。

肉体として見た時の年齢ではなく、『魂』で見ると違うのではないか・・・?


年上側の飛びこむ勇気。

そして、年下側の受け入れる勇気。


なんか、そんな気がして来たのだ。


良く考えてみると、俺が大好きだった早くに亡くなって逝った人たちの男性は、みんな子どものようなところがあった。

そして、その奥さんたちとMさんは、俺にとっても姉や母のような母性的な人たちばかりだ。

俺より年下な人でさえも・・・。


そして、みんな旦那さんを深く愛していた。

綺麗で能力も高い人たちばかりだった・・・。

その気になれば直ぐにでも再婚出来そうな人たちばかりだったのに・・・。

みんな未亡人のままだった・・・。


しかし、どちらにしても、双方、物凄い勇気がいるのだろうなと思うのだ。

そして、その勇気を振り絞るだけの情熱。


それを持てていたことを羨ましく思うのだ。

そして、きっとその勇気は、女性が男性に与えていたのだろうと思うのだった。


お互いがお互いを尊敬し合える仲、尊重し合える仲、そして同志・・・。


アドラーの『幸せになる勇気』には、こう書かれていた。


「愛とは、人生の主語を、『私』から『私たち』に変えること」

果たして、今の俺にそれだけの『勇気』と『情熱』を持つことは出来るのだろうか・・・?


今後、『勇気』と『情熱』を与えてくれるような女性と巡り会うことは出来るのだろうか?


そういえば、俺の親友Tも40歳の時に18歳下の奥さんを貰ったのだった。

今度飲んだ時にでも、実際のところはどうだったのかを聞いてみようと思う、俺なのであった。


(つづく)

2019年10月28日 (月)

俺の道 ~ 恋愛編 ❤ 第一部 ~ (31)

(31)新たな期待する俺の誕生

俺は、遥ちゃんとKがタバコを吸いに一緒に駆けていく後ろ姿を見て、「良かったなぁ」と思えたのだ。


更には、俺が小説を書きながら気づいた方程式が、人の心に寄り添えるものであることの確認も出来たのだった。


俺は研修後、この小説自体に価値があるのではなく、書くこと、そしてその時々の俺自身の感情を知ることに価値があったのだと、改めて気づいたのだった。


もう、遥ちゃんにこの小説を手渡す必要は無くなったと思った。

俺はこれからの彼女に対し、これまでと変わらぬ想いで、彼女と普通に接して行けば良いと思った。


彼女の新しい恋を、彼女の幸せを願いながら、普通に応援していけば良いと思ったのだった。


俺のたった10日間にもみたない『恋』は、ここに幕を閉じたのだった。

しかし、何故か恋が実るよりも大きな充足感が生まれているのであった。


きっと、27年前の離婚で傷ついていた自分に気づき、それを癒せたことが最大の成果のような気がするのだった。


そしてそれにより、俺が目指す、『大きな樹のような人間』に、一歩近づけたのではないかと思えたのであった。


更には、今後訪れるであろう新たな『恋』に、期待する俺が生まれたのであった。

今回の遥ちゃんへの想いは、きっとそのためのステップだったのではないかと思えたのだった。


何せ、中3以来、約40年ぶりの『恋』だったのだから・・・。

それが少しだけでも、『出来た!』と思えただけで、妙な幸せを感じている俺なのであった。


そして俺は、この小説をBLOGにすることに決めたのだった。


(つづく)

2019年10月27日 (日)

俺の道 ~ 恋愛編 ❤ 第一部 ~ (30)

(30)小説化の成果

俺は、前話まで書いて9月度の研修に参加した。


それまでの俺は、この小説を完成させ、21日の『鏡の法則』のミュージカルに遥ちゃんと行くことが出来たら、その時にこの小説を渡そうと考えていた。


しかし、研修を終えた今は、もうその必要が無いことに気づいたのだった。


Wさんの店の仮オープンの時にKのハットを被り、笑顔でいた遥ちゃんに、俺は嫉妬を憶えた。


しかし、そのハットを被ったのが、彼女からの行為だったのか、Kからの行為からだったのかにより、意味が違ってくると、俺は考えていた。

それは、俺が昔のK社長の手口を知っているからだった。


遥ちゃんが笑顔であった状況から考えると、多分、付き合っているのだろうなぁとは思ったのだが・・・。

ただ、遥ちゃんの純真さを考えると、誰に対しても自然とそう出来る人だとも思っている俺がいて、まだ半信半疑なのだった。


しかし、研修2日目の午前中に俺は確信を得たのであった。

遥ちゃんとKの二人のサンダルが同じサンダルだと気づいたのだ。


そして、その日の夜、タバコ休憩の時、二人で並んで走っていく後ろ姿を見て、俺は嫉妬では無く、『良かったなぁ』と思っている俺に気づけたのだった。


遥ちゃんの新しい『恋』が始まったんだなぁと、思ったのだ。

5月に前の彼氏と別れ、傷ついていた彼女が、完全に元気になったのだと安心したのだ。


そして俺は、もし俺がこの小説を手渡せば、俺の心は満足出来たとしても、遥ちゃんにとっては重石にしかならないと悟ったのだ。


俺は、今回の研修での俺自身のテーマを、相手の『魂を見ること』、『魂を感じること』として参加した。

初日の『心構え』の項目では、俺の試験受けの時間が長くなってしまっていることを注意された。

しかし、『魂を見ること、感じること』に集中しようとしていて、いつもより気にならなかった。

そして、変化は2日目の『モチベーション』の項目の後半で突然現れてきた。


研修に参加していた20代の女性から、甘え上手な年下の元彼のことが、心にずっと引っかかったままであるとの話しを打ち明けられた。


彼女は彼に振られて一度別れ、その後彼には新たな彼女がいて、復縁した訳ではないのに、彼に甘えられるままズルズルと身体を許し、お金まで出してしまった自分を責め続けていた。

更には、それを慰めようとする親友の声を、拒否し続けて来てしまっていたことを、彼女は泣きながら悔いていたのだ。


以前の俺であれば、それは自分が悪いと、『自己責任』の考え方を説き、彼女を責めていたかもしれない。

そして、一方的にポジティブな考え方を押しつけるような言い方をしていたかも知れない。


しかし、この日の俺は違った。

彼女の父親になった気持ちで、彼女と一緒に涙した。

すると俺からは、彼女を責める言葉や、無理に動機付けする言葉は一切出てこなかった。


そして、自分を責めずに許すことを勧めた。

そういう弱い自分を受け入れることを勧めた。


話し終わった時、彼女は笑顔になり、自らの意思で前を向いた。

そして、これからの生き方を決意した。


俺は、俺の中での合格点を与えた。

その後、彼女は無事合格した。


彼女の試験受けは、これまでの俺にはなかったやり方だった。

この小説を書いていて気づいた、『方程式』を使っただけだった。


『魂を見ること』に集中していると、『魂が元から汚れている人はいない』という考え方になっていた。

『みんな、良くなりたい、幸せになりたいと思いながら、知らない内に今の自分になってしまっているのだ』と思えた。

『誰も悪くは無いのだ』と思えた。

責める言葉は出て来なかった。


この時の俺は、それまでに感じたことがない感覚を覚えた。

彼女の心に寄り添えたと感じられたのだった。


それまでの合格点を出した時の共感共鳴による高揚感とは違った感覚だった。

何か充実感のような、安らぎに似た感覚だった。


その後の40代の男性も同じだった。


最初は無表情で頑なだった人が、いつしか俺の前で号泣していた。

俺は、俺の中での合格点を出し、その後彼は合格した。


合格した彼を迎えてハグをした時、俺は彼から言われた。


「先生の名前を教えて下さい」


彼はそう言って、俺の裏返っていた名札を見たのだった。

俺は内心、「俺は先生じゃないんだけどなぁ・・・」と思いながらも、無性に嬉しかった。


更にその後の40代の女性も同じだった。


彼女は、自分の会社の女性社長の夢や志といった『想い』を社員に伝える役割だといった。

そして、社長のことは大好きで、社長のその想いを伝えようとすればするほど、その想いは伝わらなかった。

逆に周りからは、彼女自身が凄い人のように思われ、現実の自分は違うのにと、そのギャップに苦しんでいた。

また上司からは、それが上手く出来ていないことを責められているように感じていた。

そして、これからどうしていけば良いのかを彼女自身が見出せずにいた。


はじめの内は、その苦しみからか、ポロポロと涙していた彼女であった。

その彼女に対し、俺は一緒に悩み苦しんだ。

そうしたら、俺から自然に出てきた言葉があった。


「なんで、社長の想いを社員に伝えるだけなんだろうね?」

「社長は、社員の考えや意見も知りたいんじゃないかなぁ?」

「社員も自分たちの想いを社長に伝えたいんじゃないかなぁ?」


それまでポロポロと泣いていた彼女の顔がパッと輝いたのだ。

彼女は気づいたのだった。


今までは、社長から社員への上から下だけだったことに。

社員から社長への下から上へも出来ることに。

そして、それが出来る立場にあるのは、自分しかいないことに。

更には、そのやりがいに。


彼女は晴れ晴れとした笑顔になった。

俺の隣で聴いていた、トレ研で参加して来ていたMさんも、その笑顔への変化に驚いていた。


俺は、俺の中での合格点を出した。

そして、その後彼女は無事合格した。


この日の俺は、一度も大きな声を出さなかった。

そして、俺は思った。


「人の気持ちに寄り添うということは、こういうことだったのかぁ・・・」

「引き出さずとも、寄り添えば自然に出て来るんだなぁ・・・」


俺は、今回の研修でこの3人に教えて貰ったのだ。


俺は、小説化に気づき、『俺の道』小学生編と、この恋愛編を書いて気づいたことの成果を感じられたのだった。


そして、小説化に気づかせてくれた遥ちゃんの存在に感謝したのだった。


(つづく)

2019年10月26日 (土)

俺の道 ~ 恋愛編 ❤ 第一部 ~ (29)

(29)来るもの拒まず、去る者追わず

遥ちゃんから『鏡の法則』のミュージカルへ行く返事を貰ってから3週間が過ぎた。

その間に『俺の空』小学生編も全10話だったものが、全11話に増えた。


そして、この恋愛編も29話まで来てしまった。

まさか、こんなに長くなるとは、夢にも思っていなかったのだが・・・。


しかし、書けば書くほど、自分の中で、自分を許し、受容し、手放して行く俺が、ハッキリと感じられ、書くことを止められなかった。


今、やらなければならないことだと思った。


そして、ここまで書いて来て、一つの結論みたいなものが見えて来た。


俺が若い頃から貫いてきて、信念のようになっていた、『来るもの拒まず、去る者追わず』の考え方自体は、間違っていなかったのだと思ったのだ。

しかし、この言葉の中には表現されていない、文字には書かれていない大切なことに、俺はこれまで気づけなかった。


間違ってはいなかったが、大切な真理に気づけなかったのだ。


俺は、去るものを決して追わなかったが、その分、断ち切って来ていたのだ。

それが俺の過ちだった。

追う必要もないが、断ち切る必要もなかったのだ。


結果的に別れることになったとしても、縁を持てたこと、俺を好きになってくれたこと、俺を信じてくれたことに感謝し、人としての優しさや愛を与え続けること、心の中で応援し続けることが大切だったのだ。


俺は、『あいつとの出会いがあったから、今の俺がある』という、頭の中での感謝はしていても、『人としての優しさや愛』を与え続けることをしてこなかったのだ。


それは、心からの感謝ではなかったことに気づけなかったのだ。


断ち切ることで、忘れようとしていたのだ。

そのことに俺は、今やっと気づけた。


『来るもの拒まず、去る者追わず』+『されど、与え続けよ、優しさと愛を』

俺の造語だから名言にはならないが、きっと真理に一歩近づけるのではないかと思うのであった。


(つづく)

2019年10月25日 (金)

俺の道 ~ 恋愛編 ❤ 第一部 ~ (28)

(28)諦めの先にあるもの

遥ちゃんは、俺にとっての『マザー・テレサ』だったと気づいた俺は、その過程の中で、一つの方程式に気づいたのだった。


それは、許した後の次のステップだったのだ。


『許す』 ⇒ 『受け容れる』 ⇒ 『手放す』 ⇒ 『与える』


そして、閃いたのだ。

その方程式の答えが何であるのかを。


『諦める』


ネガティブにではなく、ポジティブに。


諦めるとは、『明らかにする』、『明らかに見極める』、ということだ。

それは、思い通りにならないことを、思い通りにならないこととして見極めること。

勇気を持って現実を直視し、物事の本質を明らかに見て受け容れること。

執着心を手放すことだ。


これは、俺は既に頭では理解しているつもりだった。

しかし、実際には、自分のものになっていなかったのだ。


初めての離婚の時、俺は彼女から『別れたい』と言われてから、3~4ヶ月間悩みに悩んだ。

夢を追いかけ、未来のために頑張ろうとする俺。

今を楽しみたいという彼女。


俺は、彼女が求めるように休みも取るようにした。

一緒にいられる時間を増やし、出来るだけのことをしたつもりだった。

しかし、それでも彼女には不足だったのだろう。

彼女の気持ちを変えることは出来なかったのだ。


12月31日の早朝、住んでいたマンションの屋上へ一人で上り、自分自身に問うた。


「お前は、彼女のことが好きか?」

「お前は、彼女のことを愛しているのか?」


答えは『Yes』だった。

そして、更に問うた。


「ならば、なぜお前は彼女を苦しめるんだ?」

「彼女の望みは離婚だ」

「お前と一緒にいることではない」

「お前の別れたくない気持ちは、お前の欲だ」

「お前のエゴでしかない」

「お前が彼女を本当に愛しているのなら、彼女の望みを叶えてあげることなのではないのか?」


「今のお前が彼女に出来ることは、彼女を縛りつけることではない」

「彼女を自由にして上げることなのではないのか?」


俺は、登って来る朝日を見ながら、決断した。


「別れよう・・・」


そもそもの間違いは、夢がありながら彼女を受け入れてしまったことだったと思う。


T学校の校長にも言われた。

「成功したいなら彼女と別れろ」と。

「同情と愛情は違うものだ」と。


彼女を受け入れるなら、彼女を一番にしないといけなかったと、今では思う。


しかし、過去は変えられない。

俺は受け入れてしまったのだ。

そして、今、振り返ると、この決断自体は、間違っていなかったと思う。


しかし、この後がいけなかった。

俺は、彼女に優しく出来なかったのだ。


彼女一人に離婚届を提出させた。

引越しは、俺のいない時に一人でやらせた。

引越し先も、連絡先も、何も聞かなかった。


俺は、この時点で彼女との関係を断ち切ったのだ。

それ以上、自分が傷つかないために・・・。

別れても、何かあれば、彼女を守ってあげようと考える余裕が全く無かったのだ。


彼女が引越して行った数日後、それまで二人で毎朝一緒にジョギングをしていたコースを、俺はいつもと同じ時間に、いつもと同じペースで走っていた。


すると、俺の目の前を彼女が走っていたのだ。

後ろ姿は、間違いなく彼女だった。

走るペースもいつも通りだった。


一瞬、俺は声を掛けそうになってしまった。

しかし、そうなった自分を、俺は恥じた。


そして、俺は加速して彼女を抜き去った。

一度も振り返らなかった。


俺は、その後も毎日同じ時間に同じコースを走り続けた。

しかし、二度と彼女と会うことはなかった。


今の俺なら、きっと違うだろと思う。


昔の俺は、それ以上自分が傷つくことから逃げたのだと思う。

自分のことしか考えていなかったのだと思う。


俺はこの小説を書きながら、『手放すこと』と『断ち切ること』の違いを知った。

そして、方程式の最後の部分、『与える』が出来ていなかったことに気づいた。


人としての優しさを・・・。

人としての愛を・・・。


今なら、分かる。

きっと彼女は、俺のそういう所を見抜いていたのかも知れない。

彼女も自分から求婚し、決して別れるために俺と一緒になった訳ではないことに、俺は気づけなかったのだ。


俺は、彼女の言葉ばかり聞いていたのだ。

心の声を聞いていなかった。

魂を見ていなかったのだ。


俺は、彼女との離婚と同時にT学校も辞めた。

そして、不動産業へ戻った。

それから半年後、親父が自殺した。


当時の俺は、仕事に没頭した。

寂しさを感じることも無かった。

冷静に過去を振り返り反省することもなかった。

彼女のことを記憶の片隅に押しやり、消し去っていた。


2013年1月、俺は、それまで一度も彼女の夢を見たことがなかったのだが、別れてから初めて彼女の夢を見たのだった。

最初は、彼女の名前さえも思い出せなかった。


俺は、夢の中で彼女に言われた。


「はれたろさんに、もっと優しくされたかった・・・」


夢の中の彼女は、たった一言だけつぶやいて消えた・・・。


その時の俺は、その意味に気づけなかった・・・。

ただ、その時は彼女の生死が心配になった・・・。


「元気でいてくれればいいのだけれど・・・」


その後、彼女の夢は一度も見ていない・・・。


俺は、結構正夢を見るのだ。

それも、自らの危機を知らせるような夢を。

だから、気になった夢は、いつも記録しているのだ。


彼女と別れてから27年、今、やっと俺は気づけた。

俺は、忘れてはいたが、手放せていなかったのかも知れない。

彼女のことを・・・。


「Mちゃん・・・」

「お前の本当の気持ちに気づいてあげられなくて、ごめんな・・・」

「優しくしてあげられなくて、ごめんな・・・」


「俺と出会ってくれて、ありがとう・・・」

「俺を好きになってくれて、ありがとう・・・」

「一緒に暮らしてくれて、ありがとう・・・」


彼女と出会う前の俺は、スレンダーなスラッとした大人っぽい女性が好きだった。

しかし、彼女と別れてからは好みが変わり、小柄な可愛い子を好むようになったのだった。


歳を取ってきたせいか、最近はその傾向が強くなって来ているようにも思う・・・。


しかし、こうして一つずつ紐解いて来ると俺の未熟さを痛感する。

もうすぐ55になるという男が、やっと気づけたのだ。


優しい人間になると決め、遥ちゃんへのお詫びと感謝のつもりで書き始めた手紙だった。

しかし、小説風に書き始めたら、何故か27年以上前に離婚し、忘れていた彼女のことが思い出されて来たのだ。


こんなことを書く為にこの小説を書いて来た訳ではないのだが・・・。

なぜか書かずにはいられなかった・・・。


きっとあの時、振り返って声を掛けなかった俺を、別れた後の彼女に優しく出来ずに関係を断ち切ってしまった俺を、俺は心のどこかで許せていなかったのかも知れない。


しかし、あの時の俺は、自我を捨て、精一杯彼女のためを思って決断したことには、嘘偽りはないのだ。


27歳の俺は、27歳なりに精一杯やったのだ。

だから、それでいい・・・。


もしかしたら、これから本当の『恋』をするためには、当時の俺を許し、手放す必要があったのかも知れないと思うのだった。


そして、これからは、男であろうと、女であろうと、別れた相手に対しても、与え続けられる俺になっていかなければならないと思うのだ。


彼女への感謝の気持ちは、これからの俺自身の成長で返して行くしかないと思うのであった。


(つづく)

2019年10月24日 (木)

俺の道 ~ 恋愛編 ❤ 第一部 ~ (27)

(27)マザー・テレサ

『俺の道』小学生編は、全10話になった。

そして、9月3日から1日おきに公開し、10話は21日の公開予定になった。

なんと、その日は遥ちゃんと『鏡の法則』のミュージカルを観に行く予定の日だった。


そして俺は、『俺の道』恋愛編・第一部を書き始めた。


最初は、14日に書き始め、気づいたら溜まってしまっていた当初の手紙部分を小説風に書いていた。

しかし、書いている内に途中から、俺の深層心理が浮かび上がってきていることに気づいた。


書き始めたのは、Wさんの店の仮オープンの日を過ぎてからだ。

書きながら、涙が溢れている自分がいた。


俺は書きながら思った。


「俺は遥ちゃんへの想いを手放そうとしているのか?」


疑問を抱きながら書き進めて来た。

そして、ここまで書いて来て、俺は気づいた。


「遥ちゃんへの想いを手放すんじゃなかったんだ」


「期待する俺、完全否定の俺、応援する俺、レフェリーの俺、嫉妬する俺、求める俺・・・」

「それら全ての俺を、俺は受け入れ、そして手放すためだったんだ・・・」


「遥ちゃんへの想いはそのままでいいんだ」


「彼女を好きな気持ち」

「彼女に幸福な人生を歩ん貰いたいと思う気持ち」

「自分が生きている限り、応援し続けたいと思う気持ち」


「俺は、自分の欲望に囚われていたのだ」


「恋をしたい!」

「結婚もしたい!」

「子どもも欲しい!」


「それらは、全て俺の『欲望』だったのだ」

「俺は、純粋に『好き』という気持ちだけを持ち続ければいいんだ」

「彼女が望むことで、俺が出来ることだけをしていけばいいんだ」

「そして、彼女が望まないことをしないことだ」


そして、俺は一番大切なことにも気づいた。


「遥ちゃんと同じように思える人を、一人ずつ増やして行くことだ」

「女性だけではなく、男性も・・・」

「そして、年齢も何も関係無く・・・」

「一人でも多くの人を・・・」


「そのためには、相手の『魂』を見ることだ」

「感じることだ」

「そういう過程の結果として、恋人や結婚、そして子どもというものが与えられてくるはずだ」


俺は、そう思った。

そう信じると決めた。


そして、更に思った。


「しかし、遥ちゃんの存在は凄いよなぁ~!」

「たった、この1~2ヶ月で、俺にこれだけ沢山の気づきを与えてくれるんだもんなぁ~」

「最高のコーチだよなぁ~」


「まさに、俺にとったら天使みたいなもんだよなぁ~」

「もしかしたら、彼女は俺にとっての『マザー・テレサ』かも知れないなぁ・・・」


俺は、心底そう思ったのだった。


(つづく)

2019年10月23日 (水)

俺の道 ~ 恋愛編 ❤ 第一部 ~ (26)

(26)小説化の意義

俺はその後、遥ちゃんとはいつも通りLINEはしていたが、特に彼女宛ての手紙を書くことは休みにしていたのだった。

そして、『俺の道』小学生編を書くことにしたのだった。


小学生編は、『0~10代編』の一部だ。

最初俺は、小学生の頃の記憶はあまり残っていないと思っていた。

しかし、書き出すと思っていた以上に記憶が蘇って来たのだった。


そして、小説化に気づく前の俺は、ただ記憶に残っていた『出来事』を順に書いていた。

しかし、それでは何の面白味もないことから、当初はただ書き留めていただけだった。


そして、遥ちゃんへの手紙が膨大になってしまったことで、小説化することを閃き、遥ちゃんの手紙の小説化の前に、先に小学生編を書くことにしたのだった。


小説化する為には、単なる説明やストーリー展開だけでは無く、登場人物の心理を描写する必要があることに気づいたのだ。


登場人物とは『俺』だ。

そして、それをやり始めたら、面白いように当時の俺の感情が蘇って来たのだった。


俺は、昨年暮れにイオンで出会った女の子の笑顔をきっかけに、自分を許す事が出来た。

そして、27年間抑え込んでいた親父への想いと親父の想いに気づき、自殺した親父を許す事が出来た。

更に、親父を許す事が出来た瞬間、過去裏切られたと思っていた人たち全てを許し、過去のことはどうでも良くなった。


その後、俺の内面は確実に変化してきた。

些細なことで、幸せを感じる機会がめちゃくちゃ増えたのだ。


許す事が出来たことで、過去を手放すことが出来たと思っていた。

しかし、過去に執着することはなくなったが、まだ何かに囚われている部分がある自分がいることも否定出来なかった。


俺は、この部分を何とかしたいとずっと思って来ていた。

そして、解決方法を探すべく、多くの本を読んで来た。


そして、『鏡の法則』に出会った。


『鏡の法則』には、形は違えど、俺がイオンで女の子に出会ってから自分を許す事が出来るまでの内容が書かれていると思った。

『許すこと』が出来るようになるまでの過程と、その方法が描かれていたのだ。


俺は一人でも多くの人にこの本を読んで貰いたいと思った。

そして、最初はTに、そしてSちゃんと遥ちゃんに贈った。


『鏡の法則』には、『許す』ために、『許せない相手』の嫌いな所を書き出し、その人に持っている怒りや恨み、罵りなどの感情を書き出す方法が書かれていた。


しかし、この時の俺は、既に過去に出会ったほとんど全ての人を許せていた。

だから、許すことが出来ない、怒りや罵りの感情自体が湧いて来なかったのだ。


しかし・・・。

俺の中では、まだ何か引っかかっているものがあったのだ。

俺は本を読んでは、その何かを解消する具体的方法を探し続けていた。


そして、『俺の道』小学生編を一通り書き終え、BLOGへアップする為の加筆修正をし始めた。


すると、俺は主人公の俺でありながら、読者の俺にもなっていたのだ。


主人公の『俺』の切ない気持ち、やるせない気持ち、理不尽な気持ち、褒められたい気持ち、認められたい気持ち、愛されたい気持ち・・・。


それらの気持ちが手に取る様に分かったのだ。

俺は、子どもの頃の『俺』の感情を第三者的に俯瞰していることに気づいたのだった。

俺は思った・・・。


「そういうことだったのかぁ・・・!」


俺は、涙が溢れて来た・・・。

子ども時代の『俺』を、俺は認めてやった、褒めてやった。

そして、抱きしめてやった・・・。


「お前は、ずっと頑張っていたんだよなぁ・・・」

「お前は、仲間思いの優しい奴だったんだよなぁ・・・」

「お前は、自分より弱い奴を守りたかっただけだったんだよなぁ・・・」

「お前は、褒めて貰いたいだけだったんだよなぁ・・・」

「お前は、認めて貰いたかっただけなんだよなぁ・・・」

「お前は、ありのままのお前を受け入れて欲しかっただけだったんだよなぁ・・・」

「お前は、みんなに喜んで貰いたかっただけなんだよなぁ・・・」

「そして、愛されたかっただけなんだよなぁ・・・」


俺は、小説化したことで、過去の、幼い頃の本当の自分に出会った。

俺の中のインナーチャイルドに出会ったのだ。


そして、これまで常に高みだけを見させ、完璧を押しつけ、何一つ認めることなく、褒めることなく、ただ叱咤激励し、責め続けていたインナーペアレントを発見したのだった。


俺は、物心がついたころから、ずっとインナーチャイルドを責め続けて来ていたインナーペアレントを排除した。


俺の中で引っかかっていたもの・・・。

許せたのに・・・。

手放せていなかったのだ・・・。

俺は気づいた。


「過去を変えることは出来ない・・・」

「そして、忘れることも出来ない・・・」


「しかし、ぎゅうっと抱きしめることで、手放す事が出来るんだ・・・」

「それは、受け入れるということなんだ・・・」

「受け入れることで、手放す事が出来るんだ・・・」

「それが、癒しなんだ・・・」


俺は、思った。


「この小説化の作業は、単なる物語を書くことではなかった・・・」

「今の俺を、過去の俺から解き放つためのものだったんだ・・・」

「俺自身が、真の自由に一歩踏み出すために必要なことだったんだ・・・」

「だから、『自由』について書き始めたら、迷走したんだ・・・」

「BLOGはそのために必要なものだったんだ・・・」

「全ては繋がっていたんだ・・・」


俺は思った・・・。


「まだ、小学生編しか書いていないのに・・・」

「これから、俺のこれまでの半生を全て書いた時、俺はどうなっているのだろう・・・?」

「どんな俺がいるのだろう・・・?」


その時の俺には、光り輝く未来しか見えなかったのだった。


(つづく)

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